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朝読書にもの申す

<「読書」とはほど遠い「字眺め」>

 今まで何度か「朝読書」に苦言を呈してきましたが、ここで一度まとめておきましょう。

 目的を「国語力をつけるための読書」という事に絞って考えます。  読書をする場合、次のようなメカニズムで内容を把握していきます。


1 字を読んだ瞬間に、頭の中でその意味を把握して、読み進めていきます。  例えば「悪逆非道」という言葉が出てきたら、これは「すごく悪い事をしているんだな」とパッと理解したり、「顔を真っ赤にして怒鳴った」ならば、「ものすごく怒っている」のか「すごく恥ずかしい思いをして、それを誤魔化すために大声をあげた」のか、文脈で判断したりします。


2 指示語や個人名が出てきた場合など、今まで読んだ部分の記憶を即座にフィードバックしながら読み進めていきます。  例えば、今まで読んだ内容を忘れてしまったりしていると、もう一度少し前から読み直したりする事があると思いますが、それは以前の内容が頭に残っていないと、意味がつながらなくなってしまうからです。そのため、瞬間的な記憶力が読書には必要になります。

 子供達の症状を見てみると、比較的軽症な場合は、「そのような」や「それが」という指示語が出てきた場合、その指示している内容がほとんど記憶になく「もう一度最初から読み返して当てはまりそうなところを探す」という行動を取ります。

 また、自分が読んで意味を把握していたのと実際の内容にずれが生じていた場合、助詞の「て・に・を・は・が」を間違えて読んでいる子も多いのです。  これが重症になると、言葉の意味を質問されても全く答えられなかったり、とんちんかんな答えが返ってきたりします。

 子供達がこうなる原因の一番は、語彙力不足です。例えば上記の「顔を真っ赤にして」を「風邪をひいて熱がある」と解釈してしまう子がいましたが、これだと本当に意味が通じません。慣用表現は言うに及ばず、それよりずっと基本の「漢字の意味」すらまともに捉えていない子が多数存在します。この状況で「とりあえず本を持ってこさせて読ませている」と言うことをやってみても、まともな成果が出るわけはありません。

 最近では、朝読書の時間を朝学習に変えて取り組んでいる学校もありますが、こちらの方がずっと良いと思います。「読書をさせる」より「読書をできるようにする」方が先決問題ですから。

 最近、いろいろな子育て日記のようなブログなどが流行っているようですが、それを見てみると「子供が学校でやった漢字の小テストのとんちんかんな間違いを笑い話にしている」ことから、他地域では、毎日、漢字や計算の3分間テストのような事をやっているようです。こういう「基本をしっかりさせるシステム」があっての朝読書です。


 ところが、釧路の場合、こういう小テストをやっているという話を聞いたことがありません。実際に漢字を書かしても小学校の2・3年生のレベルで止まっている子がほとんどです(高校で言うと北陽の真ん中くらいまでのレベルの子がこの状態です)。ですから、単に読書の部分だけを真似したとしても成果が出てこないのは当たり前です。成果が出ている気がするのは教師の自己満足でしょう。  つまり、釧路では、朝読書以前の言葉の基本を身につけさせないと朝読書をやらせても無意味です。それよりも前に子供達に語彙力をつけさせるための通常の授業の構築やテストの活用をしっかり進めて欲しいものです。


<国語力が極端に低いといじめに遭う確率が高い>


 さて、「国語力はすべての科目に通じる大事なところ」という認識はみなさんの共通項だと思いますが、意外と考慮されていないのが「国語力が極端に低い子はいじめに遭う確率が高い」ということなのです。

 というのは、上記の例で重症として挙げている「何かを聞かれても、何を聞かれているかが分からず、何も言えずに黙ってしまう」というタイプの子は、何かトラブルがあったときに、相手から言われた事に対しきちんと答えられない場合が多く、それが引き金になって、みんなから無視されたり、何も言い返して来ないからといじめのターゲットにされて、散々な目に遭うというという確率が高くなるのです。

 実際に、自分がいじめの相談を受けた子は総じて「国語力が低い」のが特徴でした。たいていは「何も言えない」タイプでしたが、「話はするが、何を言いたいのかチンプンカンプンな事しか言えない」というタイプも存在しました。  いじめに遭うきっかけも「先生の質問にトンチンカンな答えを言ってしまい、みんなにはやし立てられた」とか「行事の話し合いなどで、何も言わず周りから非協力的と思われた」など、明らかに国語力不足が引き金になっていました。

 そういう子に対しては、相手から言われたことに対してどういうふうに答えれば良いのかをシミュレーションしたり、一生懸命勉強して、いじめを行う子よりも学力を高くする(いじめてくる子に対し「あんた、私のことからかっているけど、あんたの方が頭悪いでしょ」とハッキリ言い返す事ができるようにしました。ただ、実際は、いじめてくる子が「自分の方が勉強できない」と悟ると、自然とからかって来なくなりましたが)ことで解消していきました。


 また、いじめは学校だけではありません。就職してからであっても、言葉が通じず、言われた事がきちんと出来ないとなると、会社の他の人間から「怒られたり、相手にされなかったり」して、自ら辞めて行くような事も考えられます。自分は、「就職しても長続きしない子」が多い一つの大きな要因として、この「国語力不足」があるのではないかと思っています。


 ですから、国語力不足は「どこかで何かに支障がでる」と考えておいた方が良いでしょう。特に重症な子は早急に何らかの対策を講じる必要があります。自分の場合、言われた事をしっかりやり、解消できるという目処がたつ子は、そこで解消してあげられますが、国語力不足に加えて「宿題をきちんとやらない」というような、今後、このままでは国語力不足を解消出来ないという子については「ショック療法」もやむなしとしています。お父さん・お母さんもそのつもりで、万が一、子供さんが重症領域に入っていると思われる場合、即、対応して下さい。

 そして、実は、学校の先生に考えて欲しいと思っているのは、単に「勉強できる」という事ではなく、「本当にいじめを無くそう」と思うのなら、まず、その原因となる「国語力不足」を解消することなのです。

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