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教室と廊下の間の壁をなくして、どうするの?

 今回も約20年ほど前に書いた「オープン・スペース懐疑論」というのを転載します。もう、学校によっては当たり前になっているかも知れませんが、当時は、突然「教室と廊下の間の壁を取り去ろう」という話が持ち上がり、全国で学校の改修が行われました。この教室と廊下をつなげた状況を、当時「オープン・スペース」と言っていたんですね。

 今の先生方は、この状況に全く抵抗が無くなっているように感じますが、本当にこれでいいのか、ということをもう一度検証してみようということで、アップしてみました。

 今回は、ぶっちゃけた感じでいきます。


「オープン・スペースって、何?」  近頃、はやりのオープン・スペース〜♪ って、歌ってる場合じゃない。今回は、このオープン・スペースなるものを疑ってみようというのが主旨。でね〜、これって、疑えば疑うほど、何だか怪しくなってくるんだよね〜。  どのくらい怪しいかっていうのは、これからの文章を読んでみてね。


 さて、このオープン・スペースっていうのは、簡単に言ってしまうと、教室と廊下の壁を取り去って(さらに廊下の部分を広いスペースにすることもある)、教室をもっと広々と使おうって、事なんだよね。  で、そうすることによる長所っていうのは、学校教育サイドの文献の内容を抜粋すると、


1 多様な指導と学習形態を組むことができる。  複数クラスの合同や他学年との合同などの指導や活動形態を組むことができる。 2 自由な学習空間を確保することができる。  伝統的な教室では一人一人の作業や学習空間に限界があるため、オープンスペースにより大きな机やテーブルを組み合わせることで、自由に移動し、ペア学習やグループ学習を容易にする。 3 多目的空間では「ゲーム」や「おしゃべり読書」などさまざまに学習空間として機能性を持たせることができる。

4 自己学習力を育成する学習の場が確保できる。 5 豊かな学習環境を構成することができる。 6 楽しい生活の場とすることができる。 7 主体性と創造性を育てる試みのできるチャンスを与えてくれる。 8 教師の学習指導観を根本から問い直す機会を与えてくれる。

9 教師中心の一斉指導から、一人一人を生かす個性化教育の推進ができる。

10 生徒の状況をいつでもすぐに見ることができる。


 と、まあ、こんな感じかな? (他には、パソコンがどうだとかというのもあったんだけど、あまりにもオープンスペースとかけ離れているので、ちょっとここでは、省略)


 ところが、この長所、よくよく見てみるととんでもない。「こんなのオープンスペースじゃなくたって出来るじゃん」っていうものばっかり。  順番に見ていくと、

 1は、こんなの廊下の壁があろうがなかろうが、先生同士で「合同で授業を計画しましょう」と言ってしまえば、おしまい。

 2は、今までだってやってるよね。教室の中を班の形にしたり、図画の時間で相手の顔を描く授業の時は、向かい合わせに座ったりした経験あるでしょ。それに廊下のスペース分が新たに出来たとしても、そのうち、「廊下は人の通るところだから、邪魔にならないように、もっと教室の中の方に寄って」って言い出す先生がでてきて結局、教室分のスペースしか使えなくなるんじゃないの? それに、いろんなホームページに載ってる写真を見てみると、教室は教室、廊下は廊下と独立させて使ってるぞ。これじゃ、壁を取り去る意味ないじゃん。

 3は、ゲームだったら今まで通りの教室でもできるし、もし、もっと広いスペースが必要だったら体育館でやればいい。もちろん読書したかったら図書室でやればいいことだ。第一、「おしゃべり読書」ってなんだ? 本を読みながらぺちゃくちゃしゃべるのか? 市立図書館がなぜ「私語を慎む」のか学校の先生自体が分かってないんじゃないのか? こんな指導をするから、図書館で騒いで注意された事を根に持って犯罪を犯したものが出たんじゃないのか?

 4〜8に至っては、こんなのオープンスペースじゃなくたって、なんにでも当てはまるぞ。

 9は、どのみち先生が一人で教えるなら、教師中心の一斉指導は変わらんぞ。これは、オープンスペースの問題じゃなく、個別指導をどうするかの問題だぞ。

 と、いう事で、まともな理由は10だけ。確かに、廊下の壁がなければ、外部の人間がすぐに教室の中を見ることが出来るよね。


 でも、こんだけ一生懸命長所をあげた割には、「壁を取り去るまともな理由」ってこれだけだって言うのが情けない。それに、この唯一の長所と思われる「生徒の状況を見ることが出来る」には重大な欠陥がある。その欠陥とは、外部から見えるイコール内部からも見えると言うこと。


 で、ここから先は、短所の部分。これは、お母さん方が経験あると思うんだけど、授業中、廊下を通る人がいたら、「あっ、今、○○さん、通った!」って言い出す子がいたりして、授業の妨げになったでしょ。お母さん方の時代は、教室のドアのガラス窓から誰かがチラッと見えただけでそうなったんだよ。これが、オープンスペースだと廊下が丸見えだから、歩く人がズッと見えっぱなしになるって言うことだ。だから、誰かが教室の様子を見に来たら、すなわちそれは、授業の妨害になるって事。様子を見られているクラスも、そのクラスに来るために通ってきたクラスにも、すべてに悪影響だよね。  おまけに、壁がないと、隣の教室の声が筒抜け。これじゃ、気になって授業に集中できないよ。


 でね、この集中できない状況について、ある新聞社の取材に応じた先生は「もう慣れました」って答えたんだって(某学校のホームページでも同じ事を言ってるよ)。これって、ダメなことを白状しているのと一緒だよね。だって、「慣れた」の意味をキチンと解釈すると「以前は、そういうのが気になったけど、今ではもう気にならない」ってことでしょ。ということは、そういう「集中できない状況」が実際にあって、「今でもそういう状況が続いている」が、「気にしていない」ってことだよね。そのくせ、教員間の研究発表などでは平気で「問題ない」って言ってる神経が、自分には分からん。少なくとも、こういう問題が実際にあるのだから、それについて、回避する方法などを論議するのが、研究の場じゃないの?   それから、オープンスペースを良いように述べているところのほとんどは、「パソコンがどうだ」とか「広場がどうだとか」って言う内容で、こんなの教室の壁を取り去ることとは全然無縁。教室の壁を取り去らなくても「パソコンはおけるし」「広いホールを造ることだってできる」よね。こんな状況のオープンスペースって、いったい何者なの?

 今、子供達の集中力とか、学力低下とかが話題になっているのに、わざわざ、集中出来ない環境を作るか? 他からの刺激がある状態で勉強してるって事は、テレビを見ながら勉強するのとたいして違いはないぞ。そんなんで効果があるの?

 それに、そうやって集中できない環境で育つと精神的に不安定になりやすいという話を聞いたことがある。すなわち、子供の頃にそういう環境で育つと「情緒不安定」になりやすく、そこから、犯罪の発生率が増えるということが考えられるんだって。ひょっとして、最近の青少年の犯罪の増加は、実は、こういった教育にその原因があるんじゃない? 実際、このオープンスペースを導入している国は、犯罪発生率が高かったりしてるし、フーリガンだっているぞ。そして、そういう国が、経済の発展や治安の維持を目指して、日本の従来の教育法を取り入れて、いろんな面で効果を上げているっていう報告だってあるんだよ。それなのに、何で日本が逆行しなければならないの?


 どう考えたって、長所と短所を比較したら、取るべき道は明らかでしょうに。  生徒の様子を見たいんなら、壁をなくさず防犯用のビデオカメラみたいなのを設置すればいいことだよね。某学習塾では、このビデオカメラを使って、新人の先生の授業の様子を見たり、授業の上手な先生の様子を見て研修したりして効果を上げているし、何よりも防犯ということで言えば、先生がナイフで刺されたりということが話題になった段階ですぐに導入していれば、大阪の児童殺傷事件もあんなに何クラスも犯人が入り込まないうちに押さえることが出来たかも知れないでしょ。先生のおかしな行為(セクハラなど)を未然に防ぐ効果だってあるし、ビデオだと立派な証拠にもなる。同じ金をかけるんだったら、ズッとこっちの方がいい。


 そこで、結論。結局、教室の壁を取り去る必要は、まったくありません。

 でも、なんで、こんな不条理なオープンスペースが奨励されているのかな。ひょっとしたら、文部科学省のお偉いさんと企業との癒着があったりして。そういえば、これって、工事費結構かかりそうだから、そういうエサになりやすいよね。  学校の先生方も、オープンスペースの良い面ばかりを聞かされて、知らないうちにその手先にされていたりして・・・。  ただ、一つ言えることは、盲信的にオープンスペースを奨励するのではなく、周りの言動に左右されず、本当に子供達にとって何がいいのかを判断することが大切っていうことだよね。

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