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小学校2年生までの釧路の算数の学力状況

 今回も2012年に書いた内容です。前回「国語」について書きましたが、算数の方がもっと悲惨という状況でした。今では考えられないような話ですが、当時は小学校2年生で「掛け算の九九」を全部教えないまま、小学校3年生に進級させてしまったとか、本文中にも出てきますが「掛け算の九九」を2週間程度で全部終わらせ、生徒が出来ているかどうかを確認せずに小学校2年生が終わってしまった、という教師が多数いたんです。


 また、最後の方に出てきますが、当時は、中学校で繰り上がり・繰り下がりの計算が怪しい子、高校生で一桁同士の足し算が苦手という子を実際に見ました。それも、学力下位ではなく、一人は中堅の北陽高校に合格しましたし、一桁の計算が怪しい子は明輝高校の生徒でした。ですから、それより下の商業・工業・東高校は、どういう状況か、ということは、火を見るよりも明らかですね。


<釧路独自で行った学力テスト結果より>

 自分は元々、算数・数学専門ですから、どうしても算数の話の方に力が入ってしまうのですが、このデータを見る限りでは、かなり悲惨な結果となっているようです。

 それで、まず、9+5という一桁の足し算の正答率が95.4%なんですね。これ、到達目標という数値が決められていて、その数値からは5.4%アップという記載になっているのですが、95.4%というと、一桁同士の足し算でも20人に1人が出来ていないという割合なんです。偶然にも釧路の生活保護率とほぼ同数だったりします。その次の38−6では、93.6%と、さらに正答率が下がります。

 で、この辺の計算は小学校1年生の内容です。すなわち、国語に書いたのと同様、小学校1年生の授業の状況が良くなく、さらに小学校2年生の担任は、その状況を改善しようとせずに、ただ、自学年の勉強を進めているだけ、という事がここでも、伺えます。ところが、算数は、前に習った基本が出来なければ、次の内容の理解が伴わず、作業もしっかり出来るようになりません。その結果、106−48に至っては、正答率が75.2%と、4人に1人ができません。


 そして、足し算・引き算が思わしくなければ、当然、足し算の積み重ねになる、かけ算の正答率も上がらないのです。7×4では、90.4%の正答率で、10人に1人が出来ていません。自分は、別のところで「7×4=48だっけ?」と書いていますが、これが嘘でないことは、ここでも分かってもらえるのではないでしょうか。

 ただ、これは、正答率の数値には顕れないのですが、実は、この小学校2年生終了段階では、まだ、かけ算の九九がスラスラ言えるという、いわゆる「習熟」の域まで達している生徒というのは、それほど多くはありません。まだ、たどたどしく計算して答えを出しているという子がかなりいるはずです。こういう子を鍛えて、スラスラ言えるレベルに持っていくのが、小学校3年生の教師の務めなのですが、果たしてそういう意識でいる先生は何人いるでしょう。これは、後の小学校3年生以上の状況を明らかにしていく段階でハッキリしてきます。


 さらに、あらかじめ、ここで書いておきますが、釧路市では、学力検証委員会を設置して、今回のテスト結果について報告をあげる事になっています。その「内容別正答率」という表では、目標値が低いため、「計算の復習」についてはプラス評価になっています。すなわち、これを見る限り「釧路の子供達は計算はしっかり出来ている」と解釈できる訳です。そして、検証委員会は、おそらくは、そういう解釈で報告をあげる事になるでしょう。ただ、自分は、9+5が出来ない子が20人に1人、7×4が出来ない子が10人に1人もいる状況で「計算がしっかり出来ている」とは思いません。ここは、データを見る人の感覚にゆだねられるところだとは思いますが、みなさんはどう思いますか?


 さて、次を見ると、ここでは位取りを扱っています。で、実は、中学生を教えていても一・十・百・千・万の位取りが出来ない子がいました。でも、ここでの正答率を見ると、位取りで正答率が7〜8割程度なんです。中学生でできないと言うことも、さもありなんという感じでしょうか。


 次に、文章問題についてですが、結局、文章を読んで式が作れても、計算で間違えてしまっては、正答率はあがりません。そして、もっと大切なのは、文章から式を作って、計算で答えが出せて「合っていた!」という感覚を身につけないと、文章問題が出きるようにならないのです。  さらに、もっと大切なのは、これだけ計算力のない子がいるならば、式をきちんと書かせて「式と答え」で別々に合っているかどうかを一人一人確認しなければなりません。答え合わせだけで終始してしまっては「式は合っているのに計算で間違えた」という子がいても、勝手に「式が間違っていた」と判断して、おかしな事をやってしまう生徒が多数出てきます。実際に中学生でも、計算で間違えているのに式をおかしく直してしまうという子が多数います。この状況を見ると、学校の先生の指導が「答え合わせのみ」に終始している可能性が極めて高いのです。ですから、文章問題が出来ないのは「子供達の文章読解力がない」という判断ではなく、学校の先生の指導上の問題として考えた方がいいのではないかと思います。


 もう一点、指導上の問題として取り上げなければならないのは「24は8の何倍?」という問題の正答率が53.4%と、半分の子しか出来ていないと言う点です。  以前、自分は他でお話ししましたが、かけ算の九九は小学校2年生の後半で習うのですが、その際、授業の進め方が遅い教師は、かけ算の九九の単元を端折るということ。酷いところでは、3学期の最後2習慣程度で終わらせてしまったところがあるんです。で、かけ算の計算すら満足に教えていないのに、文章問題まで教えられる訳がないんです。そして、こういう端折る・飛ばすという事が釧路では日常的に行われていて、特に学年の最後の方に習う単元では、このように正答率が非常識な数値になってしまうんです。これ、中学生で言えば、中1の最後に習う空間図形なども同様の状況です。


 また、時間についても100分を1時間40分に直せる子が6割程度、ものさしをきちんと使える子が同じく6割程度です。で、この2点については、学校の問題もありますが、家庭の問題も大きいのではないかと思うんです。やることを何でも子供の好きに任せていないでしょうか。時間を決めて物事を進めるというような機会があるでしょうか。


 さて、ここで、ちょっとだけ不登校の問題に触れておきますが、実は、不登校の理由の第2位が「勉強に関する悩み」なんですね。要するに「学校の授業を聞いていても全然分からない、面白くない。自分はダメな人間なのではないだろうか」という類のものなのです。  で、自分は思うのですが、勉強の内容をしっかり身につけておけば、不登校にしても、もっともっと人数を減らす事ができるのではないか、と思うわけです。そして、この学力低下が学校の先生の指導上の問題で起きているということになれば、これはとんでもない話なのです。ですから、端折り、すっ飛ばし、は絶対認める訳には行きません。


 子供さんのかけ算の九九は大丈夫ですか? スラスラ言えるレベルですか?   今では、中学校の受験を間近に控えた3年生でも、引き算の計算をやらせると、10問で半分近く間違えてしまう子もいます。総合ABCの学力テストで合計120〜130点程度、数学で言うと15〜20点程度の子で、そういう状況です。  みなさんのところは大丈夫ですか?

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