2010年度に書いた宿題についてのお話を再掲しました。
<教育委員会が家庭学習強化に乗り出しています>
釧路市教育委員会が各学校に「家庭学習の手引き」というものを配布し、それによって市内の小中学校で、家庭学習に向けた取り組みが目立つようになってきました。さらに長期休暇の補習を行う中学校も出てきて、ようやく、釧路でも「学力向上」に向けた大きな波が訪れようとしています。「学力維新」の初年度ともいうべきでしょうか。
ところが、いざ「宿題」となると、どのようなシステムで、どのように子供達に対応していけば良いのかと不安になるお父さん・お母さんも多いようで、先日おじゃました某ブログでも話題になっていました。そこで、こちらから、宿題の雛形として、現在、最も学力向上に適した「宿題対応法」を記載しておきますので、参考にして下さい。
ただし、ここで言う「宿題」とは、学校側から一定の課題が提示され、全員が一律のことをやるものとします。ですから、子供さんの自由に任せている「家庭学習」は宿題に含めません。
<小学校の宿題の性質>
さて、宿題と言っても、さすがに中学校以上の学年になると、学生時代の学力に自信があるお父さん・お母さんでなければ、そうそう見てあげる事はできません。ですから、ここでお話を進めるのは、小学生の宿題が主体になります。もちろん、中学校の子供さんを教えるということであっても、基本は小学校の延長ですから、同様に考えて下さればいいと思います。
さて、小学校の宿題として、主に出てくるのは 1 結果をそのまま身につけるもの 2 過程を身につけるもの 3 自分で作るもの の、大きく分けて3種類になります。
「結果をそのまま身につけるもの」というのは、例えば「漢字の練習」がそれに当たります。字があって、それを単純に覚えるというものだと思って下さい。こういった宿題は、単に「正しく覚えているかどうか」をチェックするだけです。そして、こういった宿題は、よほどの事がない限り、学力の高い・低いは関係ありません。写し書きするだけで、良いわけですから、誰でも取り組める宿題と思ってもらえればいいでしょう。以前では、このレベルの宿題すらなかなか出されず、現在の中学生でも小学校1年生内容の漢字が怪しい子が約1割程度、2年生内容で下位3割、3・4年生内容で5割、5・6年生内容では7〜8割の子が対応出来ていません。一般的な中学校の漢字検定の合格率を見ると、普通に中学校レベルの4級・3級に対応出来ているのは、上位1〜2割程度です。
また「過程を身につけるもの」の代表は「算数の計算」ですね。当然、途中のプロセスを見る訳ですから、途中の計算式まで丁寧に書かせなければ確認はできません。こちらに至っては、釧路の場合、生徒の9割方がきちんと書きませんから、学校の指導がどうなっているのか、非常に疑問なところです。家庭での勉強では、この点に重点を置いて下さい。 そして、最後の「自分で作るもの」の代表は「作文」です。いわゆる1と2の集大成のような内容ですから、当然、漢字の読み書きが必要であったり、本を読んだり、作文の下書きをしたりと途中の準備が必要ですね。ですから、子供さんにお話するときも、いきなり「作文書いたの?」ではなく、その過程である「本を読んだの?」あたりから、チェックを入れてあげられればいいと思います。
<宿題の過程>
次にお話するのは、宿題はどういう手順で出され、どこまでが宿題か、ということです。その順番は以下の通り。
1 宿題を出す 2 生徒がやる 3 チェックする 4 フォローする の4段階です。ここまでが宿題と認識して下さい。
まず「宿題を出す」ですが、これは、前項の「結果をそのまま身につけるもの」と「過程を身につけるもの」の場合、原則として「解答も一緒に渡す」ということです。理由は簡単です。その方が学力が付くからです。
例えば「結果をそのまま身につけるもの」では、万が一、間違えて覚えられては大変です。正しいものをきちんと覚えるためには「解答がある」ということが大前提です。また「過程を身につけるもの」についても、実際に自分でやってみて「すぐに○つけ」をした方が、格段に頭に残ります。間違えたところもすぐに直せます。子供さんにとって、ちょっと難しめの問題が出てきた場合も、すぐに○つけして、仮に合っていれば「よし、次も・・・」という流れが起きます。これが、一日・二日おいて、熱の冷めた頃に先生から返却されても、よほどこだわりのある子でない限り、意欲は薄れ去っていて、良い状況にはなかなかなりません。「鉄は熱いうちに打て」と言うことと認識して下さい。 また「自分で作るもの」については、原則、子供さんのペースという事になりますが、最初のうちは、大雑把にで構いませんから、最後の完成に至るまでの計画をお話できるといいでしょう。作文などは、子供さんが「書き方が分からない」という場合もありますから、子供さんが完全に真似をしてしまわない範囲で、書き方について触れてもいいでしょう。
そして、子供さんが実際に宿題をします。
次に「チェックする」になりますが、「結論を身につけるもの」「過程を身につけるもの」については、小学校の低・中学年の場合、出来るだけ「お家の方に○つけをしてもらう」というのがいいでしょう。そして、高学年への過渡期に自分で○つけができるようになっていればいいと思います。
このような対応をする理由としては、 1 お家の方が子供さんの学力を把握できる 2 子供さんにとって、勉強の事を一緒にしてくれる人が側にいると安心する というものです。
秋田県の例を見ても、お家の方が子供さんの勉強に関与している方が、学力が高い傾向にあります。ですから、まず最初にお母さんに○つけしてもらうというのが、一番良いパターンでしょう。また、自分で○つけ出来るという子供さんでも、○をきちんとつけているかどうか、お家の方が一度チェックしておくようにしましょう。
もうすでに子供さんの宿題について上記のような対応をしている方は今まで通りでオーケーですが、正直に言って、釧路の場合「うちの子、そこそこ勉強してそれなりになってくれればいい」と、子供さんの出来る範囲で自分で解決しなさいとしている方が多くいます。ところが、その「そこそこ」というのは、「かけ算の九九」「わり算」「小数・分数の計算」が出来ないままであったり、中学校に進学してからの数学の学力テストの点数が100点満点の30点台というような状況を差しているのではないと思います。今からでも遅くはないですから、子供さんの勉強状況を確認してあげて下さい。
ただし、遅くまで働いていて子供さんと接する時間がとれないというお母さんや、学力に自信がなく子供さんの宿題の○つけに不安があるというお母さんは、○つけを子供さんにさせても構わないですし、○つけの状態がひどいようであれば、先生が○つけをしてくれると思います。その旨を学校の先生伝えておけば、臨機応変に対応してもらえるでしょう。こういった状況について「子供の勉強をきちんとみないのは、親が悪い」と家庭に責任をなすりつけるような教師は最低ですが、だからと言って、お母さんが「○つけなんか学校でやることでしょ」と開き直るのも良い対応とは言えません。お互いの協力関係を作っていって下さい。
そして、その後、学校に提出する訳ですが、生徒がどういう宿題のやり方をしているか、お母さんの○つけが学校の指導に適しているかは、最低限、教師の方で確認する必要があります。最終的に学校の先生のハンコが押してあって、チェックが終了となります。
最後に「フォローする」になりますが、これは、「結果を身につけるもの」「過程を身につけるもの」の場合、宿題をきちんと身につけているかどうかの確認です。実は、家庭では皆無に等しく・学校でもほとんどやっていないのがこの「フォロー」の部分です。
何をするかというと、これは単純に「テストを行う」というものです。そして、基準を決めて「間違えたところをやり直し」させたり「再テスト」を行ったり、理解不十分なところは「補習」をしたりするのです。一部では「宿題の際に解答を配布」ということに抵抗を感じている方もいらっしゃるようですが、たとえ、解答を写すという「手抜きの宿題」を行っても、後にテストがあるとなると、宿題の内容を身につけていないものは、そこでフォローできますし、子供達も「後でテストで残される」となると、ごまかしをしないようになっていきます。
また、教師サイドからみても、子供達の出来ていないところを的確に把握できる訳ですから、授業力のアップにつながります。実は、塾でも、まだ授業のつたない新人講師でも、子供達の中に入って親身に補習を行っている先生は、子供達の学力を上げていきますし、子供達の出来ないところを把握していく訳ですから、授業の力も格段に上がっていきます。授業力を上げようと、頭の中だけでいろいろ考えたりしている塾講師は、机上の空論で空回りするだけ。自己満足だけでしかありません。それよりも、子供達の学力を上げようという情熱を持って、親身になって指導してくれる先生こそ、本当の良い先生だと思います。
「自分で作るもの」の場合は、チェックは「やっているかどうか」にしかなりません。間違えているところ、不十分なところを指摘し、一言コメントを入れて、後につなげていくようにしてくれれば、それでフォローは完了だと思って良いでしょう。
また、中学校の宿題となると、この小学校の宿題パターン以外に「思考力を問うもの」というパターンが出てきます。出来る範囲のものであれば、解答を見て自分で○つけがベストですが、手が出ないというレベルの問題は、学校で解説してもらえるはずです。
そして、年齢が上がり、学力がついて来ると、小学校とは違い「数日経っても問題の内容を把握している」状況になりますから、解答配布無しの宿題も増えます。特に進学校では、この形式の宿題の方が多くなりますから、将来進学を考えている方は、解答無しで自分でしっかり考えるという癖も早めにつけておきたいところですね。また、出来なかった問題を学校で解説してもらえなかったり、説明されても良くわからなかったりした問題は、きちんと先生のところに質問にいきましょう。
今まで釧路の小学校では、一部の熱心な先生の場合を除き「学校で宿題が出ない」というお母さん方の意見が多く出ていました。そして、今年度の冬休みの課題についても「宿題は出すけど、提出はない」という教員もいました。生徒が一生懸命やってきたものを「見ない」と言い切ってしまう教員って、いったい何なんでしょう? それでいて「生徒の努力を評価する」って言うのは、いかがなものか。努力の成果を見ずして、どうやって努力を評価するのか。
また「宿題では学力が付かない」という者もいます。彼がもし教員だとしたら、今まで何をやってきたのでしょう。学力の決まる割合は、生徒の努力が8割、教員の力が2割です。これは塾も同じ。同程度の学力の子がいたとして、その子達が宿題をやるのとやらないのとで比較したら、1年経つと雲泥の差になります。授業の上手な教員に教えられても、努力しない子は学力が低いまま。対して、新人であまり授業の上手じゃない先生に当たっても、家庭でしっかり勉強習慣がついている子は、学力が高いのです。そういう例を見てきていないのでしょうか。 こういう話を聞くたび、ため息がでますね〜。
最後に宿題とは何かという事を書いておきます。 「宿題とは自分で勉強する事ができるようになるための練習」です。いわゆる「自学力」というものを身につけるために行うものです。大人になって、自力で資格試験の勉強をしたり、何か困ったことが起きたときの解決を自力でできるようになるための練習です。
そして、自学力とは 1 自分で問題を見つけ 2 自分で解いて 3 自分で答え合わせをする 4 その中で出来なかったものは、自分で出来るように努力する。 という一連の流れになります。
ただし、小・中学校の生徒のレベルでは、まだまだ視野が狭く、自分で問題を見つける事が困難でしょう。それで、学校側から課題を出して、それで練習してもらうという事になります。そして、それを徐々に完全な自学力にまで高めていきます。大学受験では、自分の受験する大学のレベルに沿った問題を自分でみつけ、それを勉強していく。分からない問題があったら、いろいろな方法を使って解決していくという事を行います。ここまで育てて行くのが教育です。
したがって、宿題を出さないという事は、この「大人になってから必要となる自学力」をつけさせないことになってしまいます。これはとんでもない「悪行」なのです。 ですから、宿題を出さないという1点をもって「その人は教師にあらず」として差し支えありません。そして、学校で宿題が出ないなら、お家の方が問題集やドリルなどで構いませんから、家庭での「宿題」を出してあげて下さい。
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