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学力と研修

 今回も2013年に書いた内容です。

 いわゆる「ゆとり教科書」で教えていて、子供たちの学力がドンドン下がっていったときの内容と思ってください。

 ただ、内容は、お父さん・お母さんにとっては「専門性の高い」内容になっていますから、意味が分からないところも出てくるかも知れません。

 大事なところはどこか、というと、最後の「子供たちが勉強できるようにしようと、頑張っている先生はたくさんいますので、そういう先生を応援していってほしい」と言う事と「子供たちをダメにしていっている先生がいた場合、その先生を厳しく見て欲しい」ということです。


<ミクロの視点とマクロの視点>

 「ミクロの視点とマクロの視点」というのは、実は、学校の勉強全般に関係する内容なんです。ここでは、その視点の持ち方を確認して行くと、今の学校の授業内容の不備が浮かび上がってきますので、そのお話をしてみようと思います。

 ですから、今回は、子供さんの勉強を教えるのに自信がある、というお父さん・お母さんか、実際に授業を行っている先生じゃないと、ちょっと理解しづらいかも知れません。


 当然の事ながら、授業の研究というのは「子ども達に身につけてもらいたいという内容を、どのように子ども達に与えていったら習得しやすいか」という事を中心に進めて行くのが常道ですね。

 となると、視点は二つ。  例えば、繰り上がりの計算を出来るようにするには、どうしたらいいか、とか、公式を覚えるのにはどうしたらいいか、という、一つ一つの項目について考えるのが「ミクロの視点」。  それに対して、単元の配列などを、どのようにしていくと「子ども達の勉強が段階的にレベルアップして行けるか、もしくは、後の内容を身につけやすくなるか」という事を考えていく〜要するに、教科書全体の構成などを考えるのが「マクロの視点」という事になります。

 一般的に、お父さん・お母さんが取り組むのは「今、子供が出来ないところを出来るようにしよう」と考える場合が多いと思いますので、基本的には「ミクロの視点」なんだ、と思っておくといいと思います。

 ところが、最終的に「ここまでの内容を出来るようにするためには、現段階でどのレベルまで出来ていなければ行けないか」とか「この内容をやった後にこの内容を教えると、子どもは勉強内容が身につきやすくなる」というところまで、我々講師は考えているんですね。


 そこで、実際の例として、某市会議員が出した「台形の面積」を取り上げて見たいと思いますが、本来の手順はこうです。

 まず、第一段階として 「平行四辺形・三角形・台形・ひし形の面積の公式を理解し、その公式を用いて面積を出せるようにする」  次に 「各図形を組み合わせた図形の面積を求められるようにする」  お父さん・お母さんも記憶にあるのではないか、と思いますが、いわゆる「四角形が二つくっついた形の面積を出すのに、面積の出せる四角形に分けて考える」「全体から、空白になっている分の面積をひいて面積を求める」というような問題です。

 当然、以前の教科書の手順は上記のようになっていました。要するに、最初は「知識・技能」で対処できる物、次に、図形を見て「分割して考える」という「思考」の方に進んでいく、という手順を取るわけですね。


 ところが、現在の教科書を見てもらえれば分かると思いますが、最初に「台形の面積を求めるにはどうしたらいいでしょう」という事で、後半に来るはずの「分割」の考え方をいきなり導入に持って来るわけです。そして、みんなで相談して考えてみよう、とやるわけです。これ、出来る子はいいけど、出来ない子は「お客さん」ですよ。そして「手順通りに進めていけば、先生が黒板で説明しても10分もかからないような事」を延々と1時間かけてやるわけです。当然、面積を求める練習なんてする時間がありません。そして教師は皆「時間が足りない」と嘆くわけです。

 でも、以前の教科書で見ればおわかりの通り、同じ事を、きちんと作業を出来るようになってから取り組んでいるんです。当然、従来通りにやれば、子ども達が自分で考えて「分割」という考え方を身につけて行くわけですから、従来の手順通りに進めた方が、技能も思考も両方とも、それも短期間で習得させることができるのです。ところが、その手順を無視した結果、皆さん、周知の通り。日本全国、学力低下で騒ぐことになった訳です。

 そして、このお話を聞いてもらえれば分かると思うのですが、あの議員さん「思考力を付けるのが大事」と言っていましたが、結局、現行の授業がいいのか、それとも、以前の状況に戻せと言っているのか、全く、見当がつきません。いったい、どっちだったんでしょうね。


 さて、%の内容も身につきづらいと思っている人が多いと思うのですが、これも「マクロ視点」できちんと計算ずくで取り組めば、あまり苦労する事が無いんです。

 ところで、%で身につける内容というのは、どういうものか、と聞かれたときに、これだ、とすぐに答えられますか? 

 たぶん「何%引き」という問題が出きるようになればいい、という発想の方が多いのではないかと思います。でも、これは本質を捉えた感覚では無いんです。実際に「授業で身につける内容」と言った場合、これは、もう少し「%」の本質に迫る必要があります。

 そして、本質と言った場合、これは%の内容を習得するのに必要な感覚〜「倍の感覚」と「割合の感覚」とを分けて考えることになります。

 実際に身近な例で言うと、例えば「帰省ラッシュで新幹線の乗車率が150%」なんていうニュースがあったとします。当然、この場合は、定員の1.5倍の人数が乗っているんだな、結構、立ったままの人が多いんだろうな、という事が想像出来るんですね。ですから、%と言うのは「倍」を表すんだよ、とやってしまえばオーケーなんです。  例えば「12は4の何倍?」〜「12÷4=3で3倍」〜「%に直すと300%」っていうような具合。実際に一番最初に%に触れるときには、これだけで充分です。

 そして、次の割合の感覚ですが、これは、教科書をみて下さい。この「%を習ったすぐ後の単元」に「帯グラフ・円グラフ」が出てきます。ここで、今まで習った「倍の感覚」で計算をしながら、グラフにして全体を見ていくわけです。すると、ここで「全体を100として見た場合、何がどれだけあるんだ」という事が視覚を通して実感できます。こうして割合の感覚を身につけて行くわけです。

 こうやって、倍の感覚と割合の感覚をしっかり身につけて置いて、さて、それでは「20%引きは?」と言うことになれば、「0.2倍の金額を引く(倍の感覚)」と言われても「全体の80%に当たる金額になるんだよ(割合の感覚)」と言われても、どちらでも対応出来ることになるんですね。

 もちろん、ここまでを身につけるためには、練習量も必要ですから、当然、習ったらすぐにノートにしっかりと計算式を書いて練習。家に帰ってからは宿題で練習、ということになるんです。もちろん、素人に近い教師は、最初の段階で、割合の感覚の話を始め、結局、子供達は「先生が何を言っているのか分からない」状況に落ち込んでいったりします。「分からないのは子供や家庭が悪い・・・なんて、実は、授業の構築が悪いだけなんです。

 ただ、こうやって、一つ一つ「物事を身につけていく手順通り」に進めていけば、今までのような「親子喧嘩はしなくて済む」ようになるのですが、大抵のお父さん・お母さんは「いきなり%の金額を求めさせ、すぐに何%引きに行きたがるので、途中で挫折することになる」のです。

 また、習ってすぐに「分からない」というふうになってしまう子も出ますが、そういう子には、出来る範囲の段階で一旦勉強内容から離れて「熟成」や「沈殿」という作業も取り入れます。


 さて、今回、なぜ、このような事を書いたかというと、たぶん、学校の先生は、先生になったばかりの時には「子ども達の出来ない所を出来るようにしてあげたい」と思っていたはずなんです。いろいろ教え方の工夫をしていたはずなんです。

 ところが、今の教員の研修というと、残念な事に「子ども達にどうやって身につけなければならないものを身につけさせるか」という内容ではないんです。「言語活動」などと言って、言葉を理解させようなんていうもっともらしいことを言いながら、結局、「子ども達が身につけなければならない内容」の研修ではなく、「自分たちが自己満足するだけの研修〜もっと極端に言えば、子ども達が身につけなければならない内容を放ってまで、自分たちがやってみたいことを優先させるための研修」を行っているんです。

 ハッキリ言って、漢字一つまともに覚えさせられない教師に「言語活動」は出来ません。不毛の研修の頂点とも言える内容を張り切ってやっているんです。習っている子供は浮かばれませんよね。

 こういう研修内容を知りたい方は、釧路だと「教育研修センター」のホームページにアクセスすると、その内容を見ることができます。

 そして、是非ともお願いしたいのは、夢を持って教員になった人には、その夢がどういう物であったか、をもう一度思い出してもらいたい、と思っています。実際に、話を聞くと「今、学校でやっていることは、何か違うと思う」という教員が実は結構多い。それは、教員になるときに、きちんとしたビジョンを持っていた先生が多いという事なんだと思います。そして、そういう先生は、おそらく、生徒にとって、本当の意味で良い先生になる資質を持っているのだと思います。

 雑談や説教で時間つぶしをしてのさばっている先輩教師の真似をする必要はありません。子供達のために頑張ってください。

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