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子供達の得点は「学力域」の中で変動する

 入試が近くなると、今まで勉強していなかった子が焦って塾や教材に頼ってしまうケースが多いのですが、それにつけ込み、過剰な宣伝文句で高い教材を買わせようとする悪徳業者もいます。よく「点数が○○点もアップ」とか「わずか3週間で飛躍的な得点の伸び、そして合格」なんていうフレーズがチラシに踊ったりしますが、果たしてその効果が自分の子にもあるのか、となると眉唾ものですね。普段だと間違いなく手は出しません。ただ、入試ギリギリになると多少高くても藁にもすがる思いになってしまうのも事実。そこで、自分の子は本当に学力が上がるのか、という判断材料をここで提示していきたいと思います。


 そこでまず、ここでは別の項目で書いている、子供さんの「学力域」というお話を先にしておきます。

<子供さんの学力域を把握しよう>  子供さん一人一人には、普通に学校に通って普通に授業を受けていれば、「どんなに勉強をさぼっても、これ以上は点数が下がらない」という「点数の最下点」と「どんなに一生懸命頑張ってもこれ以上点数が上がらない」という「最上点」が存在します。子供達のテストの点数は、通常、この間で推移します。そして、この点数の範囲を「学力域」と言うことにします。

 もう少し具体的に数値でお話しすると、A君の学力域が500点満点のテストで「340〜390」、B君の学力域が「250〜310」とします。すると、A君の場合、勉強せずにさぼっていた場合、テストの点数は340〜350点くらいになりますし、一生懸命勉強すると380〜390点くらいの点数を取ることができます。また、B君の場合だと、一生懸命勉強を頑張ったときには300点を超えてきますが、さぼると250点近辺にとどまってしまう、ということになります。ですから、この場合、B君が頑張って勉強して、A君が勉強をさぼっていても、B君はA君を抜くことは出来ません。普通、子供さんやお母さん方が「点数が上がった・下がった」と言っているのは、この学力域での点数の推移です。ですから、お母さんが「点数上がった〜子供さんの学力が上がった」と思っている場合でも、我々講師の目で見ると「今回は頑張ったな」とか「もうちょっといけるはずなのに、どこかでちょっと手を抜いたな」というような評価になっています。


 ここで、解説を入れておきます。ちょっと極端な話になりますが、たぶん、お父さん・お母さん方でも「うちの子、少し勉強すれば東大でも受かる」とは考えないでしょう。それと同様、高校入試でもやはり「学力の上限」は存在します。ただ、学校の定期テストが易しく、少し勉強しただけで得点がすごく上がったと感じてしまう状況になっているのも事実です。そのせいで、子供さんがテスト直前に真剣に勉強してくれれば、高校入試はなんとかなると考えがちになるのは否めません。

 また、宣伝文句の「短期間で○○点アップ」というのは、大抵、この学力域内の得点アップです。そして、学力域の幅の広めの子が、学力域の最下点から最上点まで一気に上がると、ものすごく点数が上がったように感じてしまうのです。宣伝文句に使われている実績はこのパターンです。ただし、これが誰にでも当てはまるかというと、それはかなり怪しいと思っていた方がいいでしょう。なお、学力域の幅は、思考力が高いほど広く、思考力が低いと狭くなる傾向にあります。

 そして、我々が目標としているのは、もちろん、学力域内での点数アップもありますが、究極は「学力域の上方シフト」なのです。例えば、前述のB君の場合だと学力域を今の250〜310から290〜350にシフトさせると、頑張って勉強すればさぼっているA君を抜くことが可能になります。

 また、この学力域は、最下点が上昇してから最上点が上がるという傾向が強く、そのため、最初の段階では「ミスを減らす」「語彙力をアップする」「学校の先生の説明を理解できるようにする」という、基本作業を習得させることが鍵になります。ところが、点数だけを見ていては、この学力域の上昇が感じられなくなってしまいます。例えば、前述のB君の場合、一生懸命勉強して最下点が250から、260点に上がったとしても、実際にテストで取ってくる点数は、めいっぱい頑張っていれば300近辺から変わらない事になります。そして、いくら努力していても。お母さんの目から見ると「同じような点数しか取ってこないし、ちゃんと勉強しているのかしら」と判断してしまいがちです。ところが、ここで子供さんのやっている事を否定してしまうと、子供さんはやる気を失ってしまいます。  ただし、学力域の変化が起こると、日頃の言動が変わってきます。日常の生活の中で少し難しい言葉を使うようになったり、日頃気づかなかったことに注意を向けるようになってきますから、そういった兆候を見逃さず、子供さんに対応していって下さい。(以上)

 さて、ここからが大切です。単に学力域内で得点を伸ばすだけだったらポイントを絞った「知識の詰め込み」を行って、それで「分かるところだけ覚えさせてしまう」と良いのです。学力域の上限が高ければ、これだけで高校に合格します。いわゆる「短期間に急激に伸びる」というタイプです。  しかし、大抵はこううまく行きません。そこで、自分たちが行うのは、多少時間がかかりますが、この「学力域の上方シフト」になります。そして、これを狙った場合、一番最初に手を着けるところは「しつけ面」と「基本の充実」なのです。そして、最初から、この2点が身に付いている子は、学力域の上限が高い可能性があります。

例えば、 ・大人と普通に話が出来る ・準備作業などがきちんと出来る ・約束や指示をきちんと守り、実行する 〜といったしつけに関する面や ・漢字など、意味をきちんと理解し適切に使いこなせる ・小学生レベルの計算は無理なく手順通りにきちんと出来る ・覚えるものはそつなくこなす 〜といった基礎学力面がしっかりしている場合、短期間に伸びる可能性が高い、ということになります。

 逆に「日頃からダラダラしている」「宿題などの約束を守らない」といったタイプの子は、学力域の上限が低く、短期間では効果無しの可能性が高いという事になります。

 以上の点をふまえ、子供さんが短期間に伸びる可能性があるかどうかを判断して下さい。伸びる可能性があれば、多少お金をかけても、それだけの効果はあるでしょう。ただし、可能性が無さそうであれば、お金が無駄になると思います。そういう場合は、今現在の実力を素直に受け入れて、学校の先生の進路指導にしたがった方が無難だと思います。 また、自分たちが「早めに勉強を始めよう」と言っているのは、この学力域の上方シフトをするのに時間がかかるためです。特に小学校の基礎が抜けている場合、そう簡単にはシフトしません。この面からも、小学校の基礎は非常に大事なのです。

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