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「頭に入れる」と「頭から出す」が重要

<興味を持っても覚えません>

 ゆとり時代の学校の指導は「強制的に覚えさせることは悪」でした。どちらかと言うと、親も「うちの子、興味を持ったことは覚えてくれるんです」という感覚でいて、それが学校にも反映され「興味先行」の発想をしていたと思います。

 ところが、そういう指導を続けていた結果、かけ算の九九の怪しい子、小学校低学年の漢字が怪しい子、が大量に出現し、この低学年でのつまずきが、勉強離れを起こしてしまったり、低学力を生んでしまう原因となりました。ですから、強制的にでも、覚えてもらうことは覚えてもらわなければいけない、という認識の方が正しいということですね。そうしないと、勉強が分からないわけですから、興味を持とうにも持てない状態になるからです。


 また、別の観点から見ると、子供達が「面白かった」と言っていたことって、ちゃんとその後の勉強を進めてくれたでしょうか? 当然、作業したり、考えたり、場合によっては反復練習をしたり。興味の持てたことはすべて「面白い」と言ってずっとその後も続けてくれたでしょうか? 

 たぶん、答えはノー。興味を持ったところで、その後の作業が面倒だと思ったら、そういうことは全く手を着けようとしなくなる場合の方が多いと思います。

 例えば、子供達が興味を持てるようなお話を聞いて「漢字って面白いね〜」と言ったところで「じゃあ、ここからここまでの漢字を覚えておきましょう」と言ったら、子供達は言われたとおり真剣に漢字を覚えますか? かけ算の九九を覚えていない子が2桁×1桁の計算をしたところで面白いとは思わないでしょうし、かけ算の九九を覚えていて、学校で計算問題を解いて答えが合って喜んでいる子でも、「じゃあ、家でも練習してきてね」と言われた場合、その全員が喜んで計算練習をしてくるか、というと、これは別物。


 ところが、学校では未だに、この部分の理解がない教員がいて、「強制的に覚えさせることは行けないことだから、学校で理科の実験などで興味を持たせておけば、家でもやってくれるはずだ」と思いこみ、さらに、その子が勉強してこないと「これだけ興味を持たせているのに、子供がやって来ないのは、家庭環境が悪い」と思っているというケースが未だに存在します。楽しく、興味を持たせておくことが万能と考えているんですね。

 そして、おそらくは、こういう発想の教員は、自分が学生時代、無理矢理覚えさせられた事がイヤでイヤでしょうがなかったんでしょう。そのとき、無理矢理覚えさせられた事に対する「恩恵」については考えられないんでしょう。漢字でも都道府県でも英単語でも、イヤでも強制的に覚えさせられたから、教員になれたんだ、という発想が無いんでしょう。もしくは「イヤだったけれども、あのときちゃんとやっていれば、教員よりももっと上の待遇のところに行けたのにな〜」いう発想が無いのでしょう。


 そして、これは、お父さん・お母さんも同じです。他地域の保護者は、ほとんどの方がこう言います。「学生時代、もっと勉強しておけば良かった〜」って。でも、釧路で、この事をいう保護者の方は、少数派のようです。口に出さないだけかも知れませんが、子供達に聞いても、それは聞いたことがない、という子が多いのです。「何にでも興味をもって取り組みなさい」という親の方が圧倒的に多いような気がします。でも、面白くないものには興味は持てません。そして、無理矢理「興味を持て」と言うのは、無理矢理「覚えなければならないものは覚えろ」というのと変わりません。むしろ、覚えろとやる方が自然だと思います。


 ですから「興味」より「やらなければならないことはやる」という感覚で子供さんに接してくださいね。


<アウトプットが出来なければ覚えた意味はありません>

 前項では「覚える」という事を少しだけお話しましたが、覚えさせるだけではダメで、当然、覚えたものを使えるようにするための練習も必要です。例えば、英単語を一生懸命覚えたところで、実際に文章の中にその単語が出てきたときに単語の意味がパッと出てこないと訳が出来ませんよね。また、漢字のテストで点数が取れたところで、実際に文章を書かせたときに、覚えたはずの漢字が使えず、ひらがなだらけの文章になってしまっているようでは、漢字を覚えた意味が半減してしまいます。


 もう一点は「成功体験」と言ってもいいと思いますが、子供達に「出来た」という感触を持ってもらうためには、覚えたものを出す機会をふんだんに与えなくてはなりません。特に小学生の場合、低学年になればなるほど、区切りを細かく設定して「入れて、出して」の往復を増やしてあげることが、学力を向上させる一番の近道と言っても過言ではありません。基本は「テスト」という事になりますが、特に指定されたペーパーテストでなくても、小学校2年生のときに与える「かけ算の九九の合格証」みたいなものでも構いません。覚えたものを先生の前できちんと言えて〜インプットしたものをアウトプットして〜出来たという感触を持ってもらって、次のステップにつなげていく、という指導が非常に重要になります。もちろん、毎日の漢字や計算の小テストなども同様ですね。


 さて、このように「出し入れ」が学力向上のカギとなると考えると、それと逆の指導は「出し入れ」をほとんど行わない学習法ということになります。これが、いわゆる「問題解決学習」というやつなんですね。1時間に計算問題3つやってお終いとか、一つの事に対してずっと話し合いをしてお終い、という授業です。

 もちろん、これが、基本的な「出し入れ」を数多く経験していて思考力がしっかり整っている「大学生」あたりにやらせるのであれば、全く問題はありません。この年齢になると、一つのことをじっくり考える事も必要ですから。でも、これを小学生にやらせて、果たしてどれだけの効果があるか、ということなんです。

 まず、問題を解決するために必要な事項があらかじめインプットされているかどうかです。そして、インプットが整っていたとして、それがすぐにアウトプット出来る状態になっているかどうかです。この両方がしっかり整っている状況で無ければ、解決は出来ません。事実、授業を見学した際に子供達がやっていることは、先生の問いに対する答えがあらかじめ書いてある教科書をこっそり見て、それを答えている子が大半。そして、そのせいで、答えを見させてしまうと自分で考えなくなる、と教科書を見せないようにしようとする教師が出てくる始末。単なる悪循環です。こんな事で思考力がつくと思っている方が間違いです。


 思考力の高い子、というのは、相場が決まっています。

 まず、語彙力が豊富で、漢字検定を受検させれば、該当学年より上のレベルの検定に合格します。中学校3年生で準2級や2級に受かって行くんです。

 もう一点は、数学の難問を解けるようになっています。要するに、問題を解決するためには、どのような手順で物事を考えていけばいいか、という、そのプロセスが身についているんです。

 ここまで来て、初めて、今起きている「社会問題」について、あなたはどう考えますか? という問いに答えられるようになるんです。


 ですから、たかが北海道公立高校入試の裁量問題すら「難しくて出来ない」と言っているレベルの教師には、子供達に思考力をつけさせられないのです。そういう教師に限って「思考力が大事」と問題解決学習に走るんです。愚の骨頂とはこのことなんですね。


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