これも2017年に書いた内容です。話の中に出てくる高校入試の偏差値は、当時のものと思ってください。
<逆転しやすい=絶対学力のレベルが低い>
「絶対学力」と「相対学力」という言葉が出てくるので、まずは、ここから確認しますが、「絶対学力」というと、周りの人のレベルに関係なく「これだけのものが身についている」という絶対的なもの。それに対し「相対学力」というのは、学力が「5」の人と「3」の人を比べると「5」の方が上、という、そこにいる子どうしの比較で見る学力と思ってください。
さて、最近の傾向として、ビリギャルなどもそうですが、学力の高い学校を、ものの1年くらいで一生懸命勉強して、逆転して合格する、というものが多く出回っています。塾の宣伝などでも「驚異的に学力を伸ばした」なんていう話が出てきます。でも、これ、本当は、おかしな話なんです。というのは、例えば、自分たちの大学受験のときであれば、慶応、というと、散々遊び回っていた子が、ものの1年勉強したくらいで合格できるような大学では無かったはずなんです。
じゃあ、これはどういうことなのか、というと、要するに「大学のレベルが低くなってしまっていて、ちょっとの努力で簡単に受かるレベルまで下がってきている」と見ておくのが「正しい見方」。
例えば、自分たちの受験の頃は、絶対学力として「10」まで必要だった大学が「5」とか「6」くらいまで、レベルが下がってきている。そして、過去には「8」とか「9」の学力があった子が、努力して「10」のレベルの大学に合格していく、というのが、本来の「逆転現象」なんです。
それが、現在は、大学のレベルが「6」くらいまでに下がってきていて、「2」とか「3」くらいの子が逆転現象を起こしている、と考えた方がいいんですね。
そして、もっと言うと、「8」とか「9」の学力の子が「10」に上がるためには、それこそ、血のにじむような努力をしなければならないのですが、これがレベルが下がって「5」とか「6」となると、比較的、楽に超えることが出来る。要するに、上のレベルであればあるほど、1段階のハードルが高くなるんです。
この上のレベルになればなるほど、ハードルが高くなる、というケースは、漢字検定あたりを参考にしてもらっても、分かると思いますが、現在5級の子が4級や3級に受かろうと思って勉強するレベルと、現在2級の子が準1級や1級を勉強するのとは、明らかにレベルが違いますよね。1級に受かろうと思うと、4級や3級の勉強などとは比べものにならないくらいハードで、相当な能力が必要になるんです。ですから、同じ1級分と言っても、そのハードルの差は歴然としている訳ですよ。
となると、簡単に逆転現象が起きている場合、それは、目標となっている大学や、中学校で言うと学年順位など、その絶対的な学力レベルが低くなっている、と捉えておいた方がいいんです。そうすると、学力が全体的に低いところであれば、学習環境がちょっと変わった程度でも、簡単に逆転現象が起こる。もう少し具体的に言うと、学級崩壊を起こしている所に通っていた生徒が、きちんと勉強できる環境になっただけでも、学力が非常に伸びたような感じになってしまう、ということなんです。
これが、実際に起こっているのが釧路なんです。全体のレベルが低い状況なんです。だから、入試ギリギリでも、数学の計算が満足に出来なくても、社会や理科で、人よりちょっとだけ多めに勉強すると受かってしまう。それくらい、高校のハードルが低いんです。 先日の中3の4月実施の北海道学力コンクールのデータで見ると、釧路で2番手の公立である江南高校と帯広で市内公立普通科の一番下の緑陽高校では、江南の方が合格判定が高くでます。要するに江南の方がレベルが低くて入りやすい、ということなんです。
ですから、簡単に逆転を起こせるような状況になっているということは、相対学力を絶対学力に換算してみると、圧倒的に低い状態である、ということなんですね。そして、それで合格しているのは、塾のおかげ、なんていうものではありません。基本的に、生徒の意識と生徒を取り巻く学習環境の差、という具合に見ておけばいいんです。 すなわち、学校がきちんとした学習環境を整える、家庭での勉強の取り組みを保護者がしっかり考える、という2本柱がしっかりしていかなければならないんです。学校の授業進度が遅いとか、校長会の会長が「裁量問題は難しいからやめてほしい」などと道教委に訴えているような状況では、まだまだ、全体のレベルアップはほど遠い、ということですね。
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