「計算のフィードバック」と「臨界点」という考え方
- markun5
- 2021年7月25日
- 読了時間: 4分
これも2012年に前のホームページに書いた内容です。
ここで出てくる「臨界点」という言葉ですが、これは原子力発電所で使っている「ウラニウム」の反応などで使われる言葉で、「ある一定の限界を超えると、そのまま放っておいても勝手に反応していってしまう」という、その限界点の事。ここでは「子供たちが問題を見た瞬間にパッと反応出来て、サッと問題を解ける状況になっている」ことを指します。
出来ていないところまで戻って勉強させるという「フィードバック」については、最近話題になっているAIを使って出来る事なのですが、これを「臨界点」まで持っていくとなると、まだAIでは無理。やはり、ベテラン講師の匙加減が大切になってきます。
また、下記にあるように、出来ていない部分が複数想定されるケースでは、AIの提示する問題を解かせるより、先生が直接子供さんのノートの解き方をみて、どこが出来ていないかを瞬時に判断する方が無駄がありませんし、生徒のモチベーションも下がらずに済みます。
この辺は「AIでは、まだまだ無理な部分」だと思っていてください。
<「臨界点」に到達させるには>
「漢字」の勉強法の項目で出てきた「臨界点」。実は、算数・数学でも効用は全く同じ。ある一定の練習量をこなせば、臨界点は見えてきます。ただ、気をつけなければならないのは、算数・数学は積み重ね科目と言われていて、ご存じの通り、以前習った内容がしっかり身についていないとなかなか前に進んで行きません。そこで、大切になるのは「フィードバック」させて、以前に習ったところを「臨界点」まで持っていくという下準備が必要になります。そこで、ここでは計算に的を絞って、その方法をどのように探るのか、を考えていきます。
ここではまず、整数の2桁×2桁、もしくは3桁×2桁のかけ算を想定しましょう。 さて、このかけ算の計算を間違えずに答えられるようになるためには、以前に習ったどのような計算が必要になるかというと、まず「かけ算の九九」ですね。それから、筆算するときには、最後に「足し算」をしなければなりません。そして、自分たちが筆算の方法を見る場合、かけ算の九九の段階で間違えているのか、それとも、かけ算を終えた後、足し算をしているときに間違えているのかを見ます。だから、単に「できない」ではなく「どこが出来ていないのか」ということを確認する事が大切になります。そして、間違えている計算の部分を先に強化するように取り組んでいくんですね。もちろん、計算の引っかかりの部分がなくなると、普通に計算しているだけで、2桁×2桁、もしくは3桁×2桁の計算が出来るようになってしまいます。
ただ、もし、これで出来ないようであれば、今度は2桁×2桁、もしくは3桁×2桁の計算で独自にでてくるところ、この場合は「位をきちんと揃えて書く」ということが出来ていないという事が考えられますから、そこを指導していくといい、ということになります。
今度はわり算です。 わり算の筆算の場合、かけ算をしてから、引き算をしますね。ということは、かけ算が出来ていないのか、引き算が出来ていないのかを確認して、出来ていないところをフィードバックしてやり直せばいい、ということになります。ただし、ここがクリア出来ているのに、わり算が出来ない子は、例えば 3×○=12という計算で○に当てはまる数が、すぐに出てこないという状況が考えられます。となれば、こういう計算を念入りに練習しておくということになりますね。
さて、こういうフィードバック計算を行っていく場合、その計算の「臨界点」というのは、1桁の足し算・引き算の繰り上がり・繰り下がりまできちんと出来るようにしようと思うと、だいたい1000〜2000問程度は必要だと考えてください。というのは、1桁の計算は、答えが暗記できているくらいまでやっておかないと、後で支障がでるのです。 でも、1000問!? とビックリしないでください。100マス計算だと10回分です。それほどではありません。
ただし、このフィードバックについては、まだ小学校の低学年くらいなら、割と早く前に習った内容を克服出来るのですが、学齢が上になればなるほど、悪い癖がついていて治りづらくなるのです。特に基礎計算になればなるほど、その場で計算するという感覚より「覚えて答える」という感覚の方が強くなりますから、余計に抵抗感が出てきます。かけ算の九九などは完全に暗記ですから、抵抗感も大きくなります。
小数や分数が出来ない子も、元を質せば、この整数の計算が出来ないことが原因になっている場合が多いのです。小数・分数については、また、別の項目で記載しようと思いますが、とにかく最初の段階では「整数の計算」をまず完璧にしましょう。 小学校の長期休暇中の補習も始まりますので、せっかくの良い機会ですから、子供さんの出来ていない部分について、お父さん・お母さんもちょっと確認してみてくださいね。
夏休みの計算の練習法でした。
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