top of page
markun5

「解法記憶」と「原理回帰」という問題の解き方

<数学の出来る子と出来ない子の差>

 前に一度、理系の対応力について同じような事を書いたのですが、ここではさらに細かく、実践的なお話をしておこうと思います。


 数学の勉強の仕方は大きく分けると2通りあります。一つは「解法記憶」で、いわゆる「パターンを覚えて、それで問題を解いて行こう」というもの。もう一つは「原理回帰」で、「物事の本質を捉えて、それに沿って問題を解いていこう」というものです。そして、これ、どちらの方が大事という区別はなく、どちらもきちんと身につけておくことが必要なんですね。

 で、一般的に、数学の問題を解かせたときに「計算は得意だけど、図形は苦手」という子は「解法記憶」で勉強している子が多く、逆に「図形は得意だけど、計算は面倒くさくて苦手」という子は「原理回帰」で勉強している場合が多いと思っていてください。


 それで、この内容を具体的にお話しておくと、「解法記憶」というのは、簡単に言うと「かけ算の九九を覚える」というようなパターンです。本来かけ算というのは、足し算の積み重ねで計算する訳ですが、そんな事をしていると時間がもったいないし、計算ミスも出やすいということから「計算した結果を覚えてしまえ」ということで、答えを覚えてしまう方法なんです。これが、中学校になると、例えば「方程式の文章問題」で「速さ」の問題は「パターン化された図を書いて解こう」とか「食塩水の問題」は、こういう風に解こう、と言ったような、解き方のパターンを覚えてしまって「それで問題を解いてしまえ」とやるんですね。

 それに対して「原理回帰」というのは、例えば、図形の問題で平行四辺形が出てきたときに「向かい合う辺の長さが等しい」とか「向かい合う角の大きさが等しい」とか、そういった「そのものの持っている性質」に戻って考えて解くというものなんです。


 ただし、上記のような「問題を解く」という限りにおいては、中学校までなら「解法記憶」に長けているだけで、かなりの高得点が可能ですから、どちらかというと「解法記憶」に頼ってしまう子が多くでてきます。ところが、高校に行って、特に上位の大学進学を考えた場合「原理回帰」を身につけていないと、学力が頭打ちになってしまいます。というのは、高校に行ってからは、普通に勉強していても単純に覚える量が多いわけで、それに加えて、原理から考えるという力が無ければ、さらにその分、覚える量が増えるということになるため、頭がそこまで追いつかないというのが実状なんです。


 そして、生徒が、この「解法記憶」で問題を解くようになるか「原理回帰」で問題を解くようになるか、というのは、実は小学校の先生の指導の影響も結構大きいのです。  例えば、三角形の面積の公式で、よく「最後に2で割るのを忘れないように」と言われますよね。ところが、この「2で割るのを忘れる」という子は、実は「解法記憶」で勉強している子が多いのです。すなわち「公式を覚えて、それで計算してしまえ」と考えているんですが、練習量が少なく、まだ「公式が頭に入りきっていない」という状況のときに出てくる現象なんです。それに対し「原理回帰」が身についている子は、公式を導く際の考え方から面積の求め方を追っていきますから「三角形の面積は平行四辺形を作って、それを最後に半分にする」という事を一度頭の中で反芻して、必ず「2で割る」わけで、この点は絶対に間違えません。ですから「この場合の面積は2で割るんだったか、割らないんだったか、どっちだっけ?」と迷うことも無いんですね。

 ということは、小学校の先生の説明で「三角形の面積は2で割るのを忘れないように」と注意するだけでは、いわゆる「解法記憶」で「公式を覚えろ」と言っているのと同じです。それに対して「三角形の面積は、平行四辺形を作って最後に半分にしたよね。だから、最後にちゃんと2で割るんだよ」と言ってあげると、ここで「原理回帰」が行われる訳で、子供達の理解が深まっていくはずなんです。  で、こういった「何気ないように見える指導」の違いで、子供達の将来の能力が大きく変わってくるんだ、ということなんです。

 そして、おそらくは、こういうところまで考えて指導をしている先生というのは少ないと思いますから、その違いが分からず、しっかり「原理回帰」の授業を行っている他の先生の授業を見ても「自分もこういう指導をしているよ」というような感覚でしかないでしょう。

 ただ、この「原理回帰」の指導法がしっかり行われないと、いわゆる「地域の大学進学率」が上がらないのです。釧路は大学進学率が低く、子供達の状況を見ているとやっぱり数学が不得意で、最終的に「解法記憶」で一番効果の高い「社会」の勉強に流れる子が多いんですね。

 ですから、「解法記憶」も大事、「原理回帰」も大事なんですが、どちらかと言うと、全体的に「解法記憶」に頼りすぎというのが、釧路の現状だと思います。このバランスを、もう少し「原理回帰」の方向に流してあげると、大学進学状況がもっと改善されると思いますよ。

閲覧数:10回0件のコメント

最新記事

すべて表示

不要な「消しゴム」の使い方に注意

授業中、消しゴムを使いすぎる子が目につくことがあります。そして、そういう子は概して学力が高くありません。そのため、この「消しゴムの使い方」に対していろいろコメントしている先生もいますが、本来、問われなければならないのは「使い方」それ自体ではなく「なぜ、そういう消しゴムの使い...

「勉強」とは、そもそも何をすること?

「勉強」とは、簡単に言うと 「知識を身につける」と 「今まで出来なかった物を出来るようにする」という行為。  だから、これに反する事をしていると学力は伸びませんよね。  例えば、他人の宿題の答えを写してお終いにしていたり、黒板に書いている字をただ写しているだけで、...

作業効率を上げる

計算などの「解き方が決まっていて、それにしたがって手順を踏めば答えが出てくる」といった内容や社会の一問一答形式の「単純に覚えたものを答える」という内容のものは、正確に速く解いていくことが一つの目標になると思います。したがって、目標となるのは「速い」ことと「正確」なこと。...

Comments


記事: Blog2_Post
bottom of page