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「自分だったら」「普通の人だったら」を考えると、読解力が上がる

<「国語力」と「常識力」>

 「国語力」と言うと、今までは自分の方でも「語彙力」などを中心としたお話をしてきました。それで、今回は、その中で文章を読みとる「読解力」というところに焦点を当ててみたいと思います。本を読むときにこういう考え方をしてみてください、という話です。


 「読解力」の一番の初歩段階は「書いてあるところを探す」というものになります。よく出題される「指示語」などがそれに当たりますが、「それ」や「これ」の当てはまるところを単純に探す。聞かれた事に対して〜例えば「季節はいつですか」「時間帯はいつですか」「誰が話していますか」などを〜「どこに書いてあるか」を探す、というスタイルになります。単純に「字面」を追いかけて答えることが可能なもので、ここが分からないと、結局、文章の意味が掴めずに読んでいる、ということになります。「心理」についても「悲しそうな目をした」などと、実際に文章の中に書かれているものは、どういう気持ちでいるか、ということが比較的簡単にわかりますよね。実は、北海道の入試や学力テストなどは、この部分からの出題が多いため、比較的易しいものになっています。


 次に出てくるのが「比較」の初期段階。登場人物の性格などを読みとるときに重要になるのですが、この場合、一番最初に比較の対象とするのが「私」です。「私だったら、こういうときにはこうするな〜」という感覚が、実は非常に大切です。ここからが、いわゆる「想像力」につながる部分で、よく「読書感想文」で「自分だったらどうするか、ということを考えて書きなさい」なんていう指示が出ていることもありますが、そうすることによって「自分だったら、こんなときに怒らないのに、この人は怒っている」となれば、この人の性格は「短気」なのかな、と考えていくんですね。

 余談になりますが、よく「100円均一」などで「アイデアグッズ」が売られていたりしますが、これも「自分だったら、ここをこうするな」とか「こういうものがあったら便利だな」という、比較の対象を「私」にして作られている物が多い、と自分は考えています。


 これがもう一歩進むと、今度は「普通の人だったら、どうするかな?」というところに行き着きます。

 ちょっと「走れメロス」を題材にしてみようと思いますが、メロスが街に行った理由は「妹の結婚式の準備の買い物」だったんですね。ここで普通の人であれば、あちこち見て回って良い物を探そうと、忙しそうに街の中を歩き回るのではないかな、と思うのですが、このときメロスは「非常にのんびり」と歩いているわけです。要するに、そういう大切なときですら「のんびり」している人なんですね。ところが、王様の悪逆非道を聞くと、急に怒りだし王様のところまで行ってしまうわけです。普通だったら「え? そんな事になってるの?」くらいで、そこに留まるはずですから、メロスは「非道に関しては、非常に強い憤りを持つ人だ」ということが分かります。

 ここで、前後を合わせて考えてみると「普通の人があくせくするところですら、のんびりしているような人が、非道を聞くと王様のところまで直談判に行くようなことまでしてしまうということから、非常に悪を憎む性格である」ということをギャップを作って強調しまくっているんです。そして、こういう点が非常に緻密に計算されて書かれている物語である、ということに気づくか、気づかないかで、読み込みの深さに違いが出てくるわけです。

 ですから、「普通の人だったらこうするだろう」という「常識観」が大切になってくるんですね。

 よく「推理小説」などでも、こういう観点が出てきますから、それが人気の理由ではないかと思いますが、要するに「私だったらどうするか」「普通の人だったらどうするか」。そういう観点を、読書に入れていくことが出来ると、今より、ずっと読書の幅が広がりますよ。

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