これも2014年に書いた内容です。
子供たちって、実は、結構細かな部分で「どうしていいか分からない」と迷っているんです。そこが適当だと「算数・数学」の学力が高まっていかないんですね。
文章内に出てきている「話題になっている内容」というのは、当時「保護者の方から問題視されていた内容」です。
<分かりやすい授業の基本>
1つ前の内容と関連するのですが、算数・数学の勉強というのは、必ず「前提となる約束」があり「その約束に即して問題を解いていく」という流れになります。
例えば、計算で「( )が出てきたら、そこを先に計算する」という約束の元に計算を進めますよね。中学校に入って「自然数」という概念を習うときにも「自然数」の約束事を習って、それに準じて「どの数が自然数になるのか」を考えていくことになります。もっと根本的な話をすると小学校1年生の算数で「+」の記号が出てきたら足し算をするんだよ、というのも一つの約束ですね。
このように前提となる約束をきちんと決めて授業を進めなければならないということ。そして、その約束がきちんとしている〜後から生徒がそんな約束聞いていない〜とならないように授業を進めないと、絶対、分かりやすい授業にはならない、ということです。
そして、この約束感覚が「計算式の書き方」や「答えの書き方」にも及びます。途中の計算式を書く場合「2数の計算の場合は式の延長にイコールを書く」「3数以上の場合は、縦書きで左にイコールを揃える」などというのも、指導上の約束事ですし、「平方根」の単元では「根号の外し方」を習った後には「根号を外せる物は外して書かないと×」、「根号の中を簡単にする」「分母の有理化」を習った後は「根号の中を最も簡単な形にすること」「分母は必ず有理化しておくこと」が計算で答えるときの約束になります。
さて、ここで最近話題になっている指導法の内容をもう一つ確認しておきましょう。小学校5年生で習う直方体の体積の問題で「たて×横×高さ」の順で式を書かないと×、という指導が良いのか悪いのか、というお話です。
実は、体積の単元は、次の小学校6年生でも出てきます。角柱・円柱ですね。そして、ここではどのような指導になるかというと、体積は「底面積×高さ」という公式に変化します。お父さん・お母さんの中には、ずっと直方体を「たて×横×高さ」で計算していた人もいると思いますが、これ、正確には小学校6年生になると直方体を四角柱と考えて「底面積×高さ」に変えて体積を求めるんですね。
そして、小学校6年生では、角柱の体積を求める際、角柱が横に倒れている形〜要するに横の面を底面と考えて解く問題も出題されるので、結果、直方体であれば、どこを底面にして考えてもオーケーなんです。
すると、式の作り方は、どこを「たて・横・高さ」にしてもオーケーになるため、小学校6年生では「たて・横・高さ」の順は問わないことになるんです。
そうなると、その一歩前の段階に当たる小学校5年生では、この「たて・横・高さ」の扱いをどのようなスタンスで取り扱うかが大切になるんです。
扱い方は次の2通り。 1 小学校6年生で、どの順番でも良くなるなら、今のうちから、どの順でも良いということで教えよう。 2 きちんと図形を見て式を立てる習慣をつけさせるため、きちんと公式の順で式を立てさせるようにしよう。
1のスタンスの場合、教える側は、約束として「小学校6年生になると順番は問わないから、今からそれに慣れておこう」という事をきちんとお話しておかなければなりません。そうしないと、きちんと用語の順番通りに式を作らなければならない、と思っている子が迷う事になります。また、いくら生徒に自由でいいよ、と言っていても、先生が書く式は基本的に「たて×横×高さ」に則った形で書くようにしなければなりません。先生はあくまで基本形で書かなければならないんです。
2のスタンスの場合、約束として「きちんと用語の順でなければ×」という事を徹底しなければなりませんし、また、問題によっては、少し斜めから俯瞰して見ているように図形が書かれていて、「たて」と「横」の区別のつきづらいものもありますから、その場合の対応の仕方〜例えば「区別がつけられないものは、どちらをたてにしてもいいよ」〜という約束をしておかなければなりません。このあたりの約束が不十分だから、保護者の方からクレームが入ることになるんです。
要するに、どちらで指導する場合も最初の約束事が肝心になります。
1のスタンスで教える先生に多いと思うのですが、どちらでもいいから、という事を約束せずに、生徒の答えを見て「あ、どっちでもいいよ〜」と軽くあしらってしまったら、生徒に「式なんか適当でいいんだ」という事を教える事になってしまう、と考えなければなりません。もちろん「どちらでもいい」というのは、大人だから分かっていること。「子供達はまだ分かっていない、知っているのは自分だけ」という事が理解出来ていない教師ということになります。
そして、お父さん・お母さんに考えて欲しいのは「どの順でも良い」というのは、小学校6年生で習う事で、小学校5年生の段階では、その先生が「子供に何を身につけさせたいか」ということで指導が変わる、一種の過渡期と考えなければならないということなんです。
ですから、この段階ではおそらく、学校によって、クラスによって、採点基準が変わるだろうということなんですね。お父さん・お母さんは、その6年生を通り過ぎてきているから、どの順でも良いということがハッキリと分かるわけで、それを小学校5年生の指導に持ち込もうとするのは、ちょっとおかしいと言うことなんです。ここは学校の先生に任せておいた方がいいんですよ。
さらに追加して言うなら、釧路の場合、補習見学で見ている限りでは、途中の式の書き方はバラバラ。約束事があるんだか無いんだか分からないような状況で、このままでは、算数・数学の学力は全く高まらないだろうということなんです。実際に結果として、算数・数学は、ダメですよね。
ですから、単元によってどのような約束が必要か、ということを自力で解決するなり研修をするなりで、しっかりさせることが大切。また、約束以前に学習内容がきちんと指導されずに終わっている事例もあるわけですから、教育委員会がそういった点をしっかり指導・監督する事が大切、ということですね。
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