いつの時でも、お父さん・お母さんが考える「子供さんの勉強の基準」は教科書だと思います。まず「教科書の内容をしっかり身につけよう」と考えている方が多いと思いますが、どうでしょうか?
ところで、今の学校の算数の教科書は、実際に見てもらえば分かるのですが、最初の導入部分が「○○さんはこう考えました。○○さんはこう考えました」というパターンで、結局、どの方法を覚えて、どのように問題を解いていけばいいのか分かりづらい構造になっています。
例えば「台形の面積を求める」という授業をする場合、さんざんいろいろな方法を考えさせて、最後にやっと公式が出てくるというパターンの授業になります。昔からこういうパターンの授業をする先生が多いのですが、実はあまり誉められたものではありません。なぜかと言うと、中に出来る子がいた場合は、その子はそれなりに考えてくると思いますが、たいていは教科書に書いてあることを見て、それを答えるだけなんですね。もっと酷いのは、教科書を見るとそれを答えてしまうということで、教科書を見せずにず〜と考えさせて、それで1時間終了という授業をする先生もいるらしいです。こうなると本当に悲惨ですよね。
では、なぜこのような授業をするかというと、その根底には「考える力を養う」という思想があるようで、いわゆる「問題解決学習」などもそれに準じるものなんですね。
ところが、小学生のレベルの思考力とは「身につけた知識をどのように生かすか」という事の方にウエイトが置かれるのが普通なんです。台形の面積の例で言えば、最初にきちんと公式で面積を出せるようになった後、台形の向きが変わったり、形の特殊な物が出てきたり、他の図形と組み合わせたものが出てきたりして、それにどのように対応するか、が基本なんです。そして、こちらの方がずっと「思考力」がつくんです。 先に挙げた「それなりに答えを出す、割と出来る子」というのは、実は、台形の面積の導入前に、他の図形の面積のいろいろなパターンに対応出来る「思考力」をすでに身につけている子なんです。そうでなければ、見たことのない形に対応できるようになっていないんです。
すなわち、導入段階であれこれ考えさせても「あらかじめ思考力が備わっている子」か「あらかじめその図形の事を知っている子」でなければ対応出来ないものなのです。これでは元々思考力が備わっていない子は、ただ置いて行かれるだけになってしまいます。その上、教科書に書いてあることをそのまま言うだけで「よくできました」なんて言われていれば「何も考えなくても、教科書を見てそれを言っていればいいや」と逆に「思考」から遠ざかっていってしまいます。
また、教える側の教員は、小学校のときに習ってきていますから、あらかじめ知っている方に分類されます。その知っている教員が、教員と同じレベルで、初めて見る図形を子供達に「考えろ」と言っているのですから、これほど乱暴なことはありません。
要するに、現行の教科書は「初めてその単元を見る子供目線」ではなく「あらかじめその単元を知っている大人目線」で作られているのです。これでは子供達を伸ばすことは出来ません。
そうなると「教科書準拠」の問題集は果たしていいのか? ということになります。で、結論から言うと、実は「教科書準拠」となっていて、煩雑な内容が入り込んでいるものより、台形の面積なら台形の面積だけを扱ってきちんと求められるように練習させる問題集の方が、遙かに効率よく、さらには思考力を高める問題集であると言えます。
現行の教科書を見る限り「教科書自体をしっかり勉強させる」と言うより「教科書内容を身につけて、それを利用できるように勉強させる」と考えて、家庭での学習に取り組んで行く方がいいと思います。
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