<福沢諭吉はこう言っている>
福沢諭吉と言えば、著書の「学問のすすめ 初編」の冒頭、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」で有名すね。教科書にもその名前が載っていて、人権思想の「人間の平等を説いている」と解説がついていたりします。ところが、学校で習うように平等についても触れているのは間違いないのですが、全編を通して読んでみると、彼の本当の主張はそこではないようです。
実際に「学問のすすめ」を読んでみると、この「人の上に人を作らず」の後に続く文章は、実はこうなっています。
〜(中略)〜されども今広く人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるものあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるはなんぞや。〜(中略)〜されば賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとに由って出来るものなり。
要するに、生まれてきたときはみんな同じなのに、賢い人と愚か者の差が出来るのは勉強しているかしていないかの違いだから、一生懸命勉強しなさいと「学問のすすめ」をしているんです。すなわち本のタイトルそのままの主張をしているんですね。
決して「人間、みな平等」を主としているわけではないんです。
ちなみにこの文章、一般の人も読むことを想定して、皆に分かりやすい文章で綴ったと本人が「学問のすすめ 五編」で語っていて、発行部数は当時の人たちの160人に1人が本を持っている割合になるそうです。
これ、今の時代で考えると、日本の人口を1億2000万人とした場合、75万部という数になります。学生は、みんな読んでいたのではないでしょうか。
現在、勉強しているかしていないかによって貧富の差が増大している状況を考えると、明治時代の彼の主張に耳を傾け、もう一度、勉強がなぜ必要なのかという原点に帰ってみる必要があるのではないかと思っています。興味のある人は、岩波文庫で出ていますから、特に若い人こそ読んでおいて欲しいと思います。
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