学校や塾の先生の勉強を教える力を「教務力」と言います。一般的に言うと「授業が分かりやすい」と言われたりする部分ですね。ところが、プロの現場では「教務力」と言うと、単に分かりやすいだけではダメなんです。「子供達が勉強した内容をきちんと身につけているかどうか」ということの方が重要なんですね。
さて、過去のデータを見る限りでは、釧路は算数の「四則混合計算(足す・引く・かける・割るの混じった計算)」の正答率が低いという事が分かっています。そして、この「四則混合計算」は単純な「反復練習」によって身につけさせることが可能な内容なんです。公文に通って反復練習している子とそうでない子の差が極端に開く単元だと思ってください。
もちろん、それ以外にも漢字や英単語など、繰り返し練習することで身に着けられるものは多いと思います。
この「反復練習」で身につけさせるというものは、教務力レベルで言うと%などの「割合」に関する内容を教えるより遙かに楽で、学習塾で言えば、まだ授業に立ったことが数回しかない学生アルバイトでも成果を出すことが出来るレベルなんです。 ですから、この「反復練習」で身につけさせるレベルの事が出来ない教員というのは「教務力」が最低レベルということになります。
ところで「反復練習」させるという事は、学校の授業はもとより、家庭でもしっかり反復練習させることが重要になってきます。ですから、学校で習った内容と同じものを家でも練習させるという事が行われなければなりません。
ところが、その際「自分の好きな勉強をやっておいで」と、学校で習った内容と全然違うことをやってくる子がいた場合、家庭での反復練習の機会を完全に逃してしまうことになります。これは、身につくものも身につかずに終わってしまう子が大量に出てもおかしくない家庭学習指示なのです。
したがって、「好きなことをやっておいで」の宿題は極めて「不適切」な学習指示と考えてください。最低でも勉強した内容を復習できるプリントを配って、それをやらせることが必要でしょう。そうでなければ、仮に学校で習った内容が分からないままの子がいても、素通りさせてしまうことにしかなりません。
また、全国学力テストの際に学習に関するアンケートを行っているのですが、このときにもチグハグな数値が出ている部分があって、それが「宿題に関するもの」なのです。
「宿題を出しているか(出されているか)」という質問の項目では、学校の教師が「毎回出している」と答えた数値と、子供たちが「毎回出されている」とが合いません。子供たちが「毎回出されている」と答える数値の方が圧倒的に低いのです。要するに「好きなことをやっておいで」と言われても、子供たちにとっては「宿題だと思っていない」ということが起きているんですね。
さらに、学校の先生方の研修の話を聞くと、大抵は「子供達に興味を持ってもらう」「勉強を楽しく感じてもらう」という事がメインになっているような気がします。でも、何のために興味・関心をもってもらうかというと、それは、その勉強内容を身に着けやすくするためであって、最終的な目的は「勉強内容をしっかり身につけてもらところにある」ということですから、そこがしっかりしていないと、結局、無駄なことをやっているに過ぎないということになります。
ですから、基本は「子供たちに勉強内容を身に着けさせること」が中心。
反復練習に関しては、その内容の宿題を必ず出す、ということ。そのうえで「好きなことをやっておいで」というのは、いいでしょう。でも「好きなことをやっておいで」だけで、宿題を出したような気になっている教師は、それこそ「教務力不足」ということになるのです。
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