<「好き」と「できる」は、イコールにならないときも>
昔から言われていますが、「好きこそ物の上手なれ」と「下手の横好き」なんていうことわざがあります。「好きだと上手になっていく」という面もあり、また、「いくら好きでも、なかなか上達しないこと」もあり、ということで、結局、どんな場合でも「好きなら上手になる」ということではありませんね。実際に、子供さんの部活を見ているお母さんからは「うちの子、部活が好きで、休まずにやってはいるんだけど、あまりうまくならないのよね」なんていうセリフが出てきたり・・・。
さて、これを学力面に置き換えてみたいのですが、やはり、お父さん・お母さんの中では「うちの子、興味を持ってくれたら一生懸命やるし、出来るようになると思う」と考えている方が結構いらっしゃいます。でも「興味を持って好き、となったところで、本当に勉強が出来るようになるか」というと、やはり「好き」だけではうまく行かないと思っていたほうがいいですし、ましてや「学校の勉強は全部に興味があって、全部好き」とは、ならないでしょうね。
自分も、過去に何百人と子供さんを見てきていますが、その中で、学校の勉強は全部好きという子は、1人いたかいないか。ですから、そんな都合良く、全部が全部、興味を持って好きになる、なんていうことは無いんだ、と思っていた方が自然なんです。
当然、学力が高い子でも、基本は「勉強はとっても大好き!」と思ってやっているのではないんですね。どちらかと言うと「将来、大学に進むためには、今、勉強をやっておかなければダメなんだ」という感覚でやっている子がほとんどです。
ですから、科目の中で1つ2つは「好き」でやっていることはあっても、全部が好きでやっている訳ではありませんし、高校に行ったら「俺、理系の方が得意」とか「私、文系の方が好き」なんていう会話も普通に出てきますよね。ですから、どの子も「全部が得意」と思って勉強している訳ではないんです。学力が高かろうが低かろうが、私、こっちは好きだけど、こっちは嫌いという、必ず、比較で物事を考えるんですね。
さて、ここで「好き・嫌い」と「出来る・出来ない」を組み合わせで考えてみますね。
好き〜出来る 好き〜出来ない 嫌い〜出来る 嫌い〜出来ない
とこの場合、4パターンになります。冒頭に書いた「好きこそ物の上手なれ」は一番上の「好き〜出来る」の欄に、「下手の横好き」は「好き〜出来ない」に分類されるでしょうね。そして、たぶん、お母さん方でも、家事で考えると「私、掃除も洗濯も料理も大好きで、一日中やっていても飽きないの」なんていう方は、あまりいないのではないでしょうか。どちらかというと、やらなくて済ませられるんだったら、やらないで済ましたいと思っている方が多いような・・・。となると、お母さんの家事のことだと、この4つの分類では「嫌い〜出来る」の方に分類しておいた方がいいでしょうか。「いや〜、私、出来ているとは思わない」と謙遜する方もいらっしゃるかも。
ところで、冒頭に書いた「好きこそ物の上手なれ」も「下手の横好き」も、基本的に何のことを差して言っているのか、というと、これは「趣味」の事なんですね。当然、趣味だから好きでやっているわけで、その中で上手になっていく人もいれば、なかなか上手になっていかないと言う人もいるというお話ですよ。
ところが、お母さんの家事っていうのは何の事かというと、これは「仕事」なんです。で、これをまとめると「趣味」というのは、上手だとか下手だとかは関係ありません。自己満足で「好き」であればいいんです。
ところが、「仕事」となると、そうは行きません。「好き・嫌い」の前に「出来る」という事が大前提になります。当然、面接や入社試験などを行って、きちんと挨拶が出来るとか、漢字が書けるとか、計算ができるとか。それが出来なければ採用されないんですね。
そこで、もし、これが「好き」であることが大事なんだと、そこが強調されてしまうと、肝心の仕事も「好きか嫌いか」で判断する、いわゆる「趣味感覚になってしまう」という事なんです。だから「なんか、この仕事、好きじゃない」と思ったらすぐにやめてしまうんですね。学校の授業もおそらく困った事になると思います。「この子、勉強が嫌いになったら困るから、なるだけ注意しないようにしよう」、「この子でも出来るレベルでやらせておいて、好きでいてもらえるようにしよう」、「強制的に覚えさせると、嫌いになるかも知れないから、かけ算の九九を強制的にやらせない方がいいんじゃないか」、「居残りで補習をやると、この子嫌がっちゃうから、残さないようにしよう」・・・あれ? これって今までの授業や就職状況のような・・・。
ということで、実際に、将来の事を考えると、好きか嫌いかより、出来るか出来ないかの方が大事なんだと思っていてください。そして、お父さん・お母さんの多くは、たぶん「子供が自分でやりたい仕事が出来るようになってくれれば、それでいい」と思っていらっしゃるようですが、好きな仕事に就くためには、その仕事が出来るだけのスキルを身につけておかなければ採用されないんですね。当然、医者になりたかったら、医者になれるだけのスキルが必要ですし、コンビニの店員になりたかったらコンビニの店員になれるだけのスキルが必要ということです。このスキルに見合わない場合、自分の希望している職業には就けないと思っていた方がいいです。「今の仕事が自分に合っていないような気がする」という子もいますが、これは、お母さん自身「私、掃除や洗濯が自分に非常に合っている」と思って、やっていますか? そんなことはないと思います。やらなければならないからやっているという方がほとんどではないでしょうか。もしも、こういう子が転職するとして、そちらのスキルは十分でしょうか。
そして、実際には、釧路の学力は非常に低い状態ですから「釧路でまあまあ普通に出来る」というレベルで、果たして企業がそのスキルに納得してくれますか、ということです。そしてさらに、この部分に目をつぶって「好き」が大事とやったらどうなるか。結果は分かると思います。
で、なぜ、こんな事を書いているかというと、実は、釧路の教育推進基本計画案では、この「好き」の部分を数値目標に入れています。でも、これは必要ありません。仕事を趣味感覚で捉える子を増やす事が教育の目標ではないと思うからです。
ですから、これから大事になるのは「好き」ではありません。「出来る」の方です。
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