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  • markun5

「分かる〜出来る」の構造

更新日:2021年7月4日

<「分かる〜出来る」の4段階>

 ここでは、子供さんに勉強を教えていて「どうも、うまく行かない」と悩んでいる方のために、ちょっと難しめですが、特に算数・数学の「分かる〜出来る」の流れの構造についてお話しようと思います。

 「分かる」から「出来る」の流れは次の4段階に分けられます。 1 分かる(理解) 2 習ったその場でとりあえず出来る(即解) 3 いつでもどこでも出来る(習得) 4 いつでもどこでも、スラスラ出来る(習熟)

 上の手順で見た場合、たぶん、みなさんは「分かる」が1、「出来る」が2以降と考えていると思うのですが、実は「分かる」は1と2の部分、「出来る」が3と4の部分なのです。

 脳科学で見ると、1・2は、一時的に物事を記憶する「海馬」と呼ばれる部分で処理するのに対し、3・4は記憶が定着している状態ですから「大脳」で処理することになります。そして、「出来る」というのは完全に知識が定着している状態、すなわち大脳で処理できる状態を指すと考えてもらえるといいでしょう。

 もちろん、子供さんの能力差もありますから、1からすぐに3、4に到達する子もいたり、1の段階でずっと躓いたりしてしまう子もいると思います。ただ、一見、出来るように見えても、その実、なかなか学力が上がっていかない子というのは、実は、1・2の繰り返しのみに終始し、3・4にまで入り込んでいないのが原因と考えられます。また、ある程度難易度の高い問題に対応しようと思った場合、基本事項に関しては、同じ「出来る」でも「習熟」の4のレベルにまで到達していなければなりません。


<「分かる〜出来る」の連鎖>

 さて、算数・数学は、よく「積み重ね科目」と言われます。これはなぜかと言うと、前に習った単元の「出来る」が次の単元の「分かる」につながっていく科目だからです。  そこで、かけ算の問題を例にとって考えてみましょう。ここでは「かけ算の九九」と「2桁×1桁」の計算の流れを示します。ここでの「分かる〜出来る」の流れは次のようになります。


かけ算の九九が「分かる」〜九九という計算があることを理解する かけ算の九九が「出来る」〜九九の計算が間違えずに出来る 2桁×1桁の計算が「分かる」〜筆算の方法を覚える 2桁×1桁の計算が「出来る」〜実際に計算して答えを出せる


 当たり前の事なのですが、かけ算の九九が出来ないと、いくら「2桁×1桁の計算はこういう風にやるんだ」と計算方法を教えられて、実際にやってみてもなかなか出来ません。このように前の段階の「出来る」が次の段階の「分かる」につながっているため、自分たちはこの「分かる〜出来るの連鎖」を作ることを目標に授業を行っているのです。したがって、算数・数学でつまずいている単元があった場合、つまずいている原因となっている「元の単元」に戻って復習するという方式を採っています。

 某大学教授は「分かる」が大切だ、と言っていましたが、残念な事に、これでは算数・数学は出来るようになりません。算数・数学は「分かる」より「出来る」ということの方が大切だからです。


<「分かる」の構造>

 では、なぜ「出来る」の方が大切か、というと、これは「分かる」の構造にあります。  実は「分かる」というのは、過去の知識や経験に左右されるものだからです。

 演劇を題材にした漫画「ガラスの仮面」で、パントマイムの指導の際にこのようなセリフがありました。「バイオリンを弾くパントマイムをしても、バイオリンを見たことのない人には、それがなんだか分からないんですよ」。これも当たり前の事ですよね。これが勉強にも関係します。


 例えば、「時間・速さ・距離」の単元について考えると、お父さんの車に乗ったときにスピードメーターを見て「速さ」が数値で表される事を知っているかどうかで理解の度合いは違いますし、「時間や距離の単位」についての理解や「単位量あたり」という考え方が身についていなければ、「時間・速さ・距離」の内容は身につきません。そういう子供に無理矢理「分かれ!」とやっても無理な話なんです。

 そして、そういう場合はどうするか、というと、みなさんご存じの「は・じ・き」の図を書いて教えるんですね。すなわち「理解を捨てて、計算を出来るようにしておく」という、一見、乱暴な手段に出ます。  ところが、子供が成長するにつれて、経験や知識が徐々に身についてくると、ある日、突然「時間・速さ・距離」の構造が理解出来るようになるのです。これを「理解の後付」と言います。

 お父さん・お母さんでも「私、小学校のとき○○が苦手だったんだよね〜」という単元がある方がいらっしゃるのではないかと思いますが、それでも大人になって「何で、こんなことが小学校のとき出来なかったんだろう」と思う事はないでしょうか。それは「理解の後付」で、習ったその場では分からなかったものが、大人になって知識や経験が増えて理解できるようになったからなのです。


 ただし、この「理解の後付」は「(内容は良くわからないけど)とりあえず答えは出せる」という状況になっていなければなりません。答えを出せるようになっていないと理解は後からついて来ないのです。ですから、算数・数学に関しては「分かる」をネチネチ追求するより、計算方法を教えてとりあえず「答えを出せる」という状況にしておかなければなりません。

 すなわち、算数・数学は「分かる」よりも「出来る」の方が圧倒的に大事なのです。したがって、もしも「分かる〜出来る」の連鎖がどこかでとぎれてしまった場合、その単元の「出来る」を鍛えて、そこから次の内容の「分かる」や「出来る」につなげるという手法を取ります。

 たぶん、分数の足し算などは、この方式で教えている場合が多いと思います。分数自体がよく分からなかったとしても、「最初に通分して、それから分子を足す」と教えて真分数の計算を出来るようにした後、その内容を用いて、今度は帯分数の計算を出来るようにしていく、という手順で進むでしょう。


<まとめ>

 ということで、ここで大事なことは3点。  1点目は、教えられたその場で問題が解けたのは「出来る」とは言わないということ。  2点目は、単元の「分かる」は、その前の単元の「出来る」がなければならないということ。  3点目は、もしも「分からない」という状況になった場合、そのときは「分かる」ということより「出来る」という方を重要視すること。


 以上の点を考えて、今後の子供さんの指導に役立ててください。

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