この話は、前のホームページ内容で、2009年度のものです。このころは「内申インフレ」と言われ、高校に合格しやすくするために、学力の低い中学校ほど通知表を高くつけるという傾向がありました。
また、推薦入試について言えば「一つの中学校で一つの高校の推薦は、1~2人」が普通ですが、某中学校では「推薦希望者全員」に推薦を出し、その年のある高校では推薦受験者の半分近くがが、この某中学校の生徒だったという現象が起きていました。
今では、軽減されていますが、実は、まだ、そういう傾向が残っているところがあります。これを機会に、通知表の結果と子供さんの学力の関係が適切かどうか、一度、考えてみてください。
<高校の推薦入試に影響が出ている可能性が>
学校間格差と言うと、全国的に一般的にイメージされるのは「学校の学力格差」のことではないでしょうか。「あそこの学校は出来るから、入試のときに有利」「あそこの学校は学力が低いから、入試に不利」というようなお話になると思います。
ところが、今、私塾などで困っているのは、通知表結果のいわゆる「内申格差」。
どういうことかと言うと、通知表に4がついていても、ある学校の生徒は学力がしっかりしているのに、ある学校の生徒は全然授業についていけないレベルになっていたりするのです。
例えば、ある学校のCランクの子は釧路のトップ校の湖陵に合格出来るくらいの学力があるのに対し、ある学校のCランクの子は、数学では基本中の基本である「因数分解の公式による計算」が出来なかったり「連立方程式の計算の基本である代入法」が出来なかったりしています。また、同じFランクでも、総合ABCの英語で60点満点中50点近辺の高得点を取ってくる子もいれば、bagとdogの区別すら怪しい子もいます。
学年順位で、比較してみるともう少し状況が分かりやすいと思いますが、学年の人数が100人の学校に換算してFランクの位置を比較すると、学年60位あたりの子についている学校もあれば、学年90位くらいの子についている学校もあります。
もちろん、学力の高い学校だと50点をとっても90位くらいにしかならないけれども、その子が学力の低い学校に転校すると、同じ50点でも60位になるという、学力的に同程度になっているということを想定して通知表がついているのなら話は分かるのですが、実際は、逆の現象になっていることの方が多く、学力の高い学校では100点満点のテストで50点くらいとらないとFランクにならないのに対し、学力の低い学校では10点程度でFランクになる、というような状況になっているということです。
そこで困るのが「高校の推薦入試」。通知表結果や学校での課外活動、そして面接などで合否が判定される訳ですが、同じランクでも学校によってこれだけ差があれば、合否判定は相当困難なのではないでしょうか。
もちろん、以前の相対評価の際にもこういった学校間格差はありましたが、今は、その比ではありません。特に、学力テストなどで平均点の低い、学力低位の中学校ほど内申が高くつく傾向にあって「学力が足りない分、内申を高くして入試を有利にしようという意図が顕著です。これでは「相対評価によって生じる学校間格差を是正する」という名目でスタートした絶対評価が、かえって悪弊を生んでしまっていると考えていいでしょう。
高校側でも、ひょっとすると「内申は信用出来ない」と言うことになったのかも知れません。最近では学力による推薦者については、なかなか合格を出してくれないようで、課外活動をしっかり行っている子が合格しやすい傾向にあるようです。ある高校の推薦では「同じランクの子でも、部活をやっている子は全員合格、そうでない子は全員不合格」となったところもありました。要するに「内申は信用できないから、学力は入試で判断します」と言うことになっているのではないでしょうか。
今年の入試を受ける子にも、この弊害が出る可能性があります。内申格差を防ぐために、入試の際には中学校側から高校側に内申割合を報告する義務があり、それを高校側でも参考にして合否を決めるという事になっているのですが、もうすでに参考程度では済まされなくなっている可能性があります。思い切って、中学校別に学力テストのランク別平均点を算出するなどして、内申点の是正を行うなどの措置を執る必要性があるようです。それでなければ、学力が低くても内申だけ高くつけてもらった子が、入試でも圧倒的に有利になってしまいます。 今後は、教育委員会がきちんと調査に乗り出したり、校長会などで内申の是正を進めるようなシステム作りを行っていって欲しいと思います。
Commentaires