記事の内容は2010年のものです。今では、いくぶん改善されていると思いますが、それでも、仕事の内容を身に付ける、資格を取得する、など、そういった就職条件のスキルアップという点においては、やはり、学校の学力とイコールになっていると捉えておいた方がいいでしょう。
<生活出来ない!?>
「偏差値」という言葉自体に嫌悪感を抱く人もいるかも知れませんが、やはり子供達の将来の事を考えた場合、進学などの目安として重宝される数値であることに間違いありません。
また、お父さん・お母さんで大学進学の経験のある方は「偏差値に30台なんてあるの?」と驚かれるかも知れませんね。学生時代に模試を受験した方は、多少テストの調子が悪くても40台前半の偏差値がつくくらいで、30台まで落ち込むことはほとんど無かったと思います。
そして、この偏差値に対する感覚も釧路ではまだまだ浸透しておらず、北海道学力コンクールを受験し、そのデータで偏差値30台がついていても「いや〜、うちの子、全然勉強していなかったから」と笑ってしまうお母さんも多くいます。
ところが、偏差値で30台がつくと、これは「顔色が青くなる」のが当然の反応で、笑っていられる状況ではありません。 釧路では、偏差値30台で入れる高校が複数あるためか、お母さんも「明輝は無理かな〜」くらいの感覚ではないかと思いますが、この偏差値は単に高校受験だけではなく、その後の状況に大きく関わってきているのです。 というのは、偏差値30台の子は「社会に出ていけない」「生活できない」という可能性が大きいからなのです。
なぜかと言うと、このレベルの子は、企業が採用しません。就職出来ないんです。アルバイトすら長続きしない可能性が大なのです。
このレベルの子は漢字の能力が小学校2・3年生程度であることが多く、就職してもその場で領収書すらまともに書けません。漢字がこのレベルですから、当然、国語力も低く、仕事の段取りを説明されても理解出来ず、何度言われても仕事をきちんと覚えられません。こういう状況ですから、就職はおろか、いろいろな業務をこなすコンビニのアルバイトすら、まともに出来ません。 当然、このレベル子が入る高校には、企業は求人を出しません。現時点で「○○高校の生徒は今後一切採用しない」という事を言っている企業経営者が増えてきているとのこと。お母さん方の中にも、何かの折りに「○○高校は求人がなくて、全然就職が決まらなかった子が何人もいる」という話を耳に挟んだという経験がある方がいらっしゃるのではないでしょうか。
ですから、もしも、子供さんが模試で偏差値30台だったら、そのまま放っておくと、やがて「悲劇」が訪れます。「もう少し勉強してくれたらね〜」なんていう甘い感覚でいる訳にはいきません。即、漫画・ゲーム・携帯などを取り上げて、最低限、明輝に合格出来るくらいになるまで、必死に勉強させなかったら、後の祭りになってしまうんですよ。 高校に合格すれば良いではなくて、その高校に進学した場合の大学や専門学校への進学状況や就職状況はどうなのか、この点までしっかり見据えて、子供さんの勉強状態を考えてみて下さい。
<解決方法は?>
ここまでは「悲劇」について触れましたが、悲惨だとばかり言っていられません。この現状を解決する方法はないのか、という点を考えるのが、教育関係者の使命だと思っています。そこで、ここからは、この現状を打破する方法を述べていきましょう。
まず1点目は、この状況を生みだしている原因を絶つという事です。 学力状況で書いた通り、この偏差値30台の子供達は、小学校の1〜3年生あたりの学習内容でつまづいています。ということは、単純に「小学校1〜3年生の指導に問題がある」と考えられます。
現時点では「小学校1・2年生のうちから、机に座って一生懸命勉強しなさい」という親はほとんどいません。どちらかというと「元気良く外で遊んで来なさい」という方が圧倒的に多いと思いますし、これは、お父さん・お母さんの子供の頃も同様だったと思います。しかし、お父さん・お母さんの頃は、かけ算の九九くらいは最低限しっかり身につけているはずなのに、今の子供達は、それすら怪しいという状況です。これはとりもなおさず「学校の指導が悪い」という以外にありません。 一部、ある小学校2年生の担任の授業を紹介しますが、漢字の練習は、黒板に漢字を羅列し「さあ、ノートに書いて練習しなさい」というだけだそうです。筆順も何もあったものではありません。それでいて「子供達に発言させることが大切」という名目で、肝心の基礎知識は放ったまま、「問題解決学習」や「ディベート型」重視の授業になっているそうです。
釧路の場合、幼児教育に関しては、決して関心は低くありません。就園率などをみても、他地域より非常に高い数値です。それでいて学力が向上しないのは、小学校に入ったとたん、指導力不足の先生に教えられ、幼児のときに培ってきたものをすべて台無しにされてしまっていると考えた方が筋が通ります。
ですから、小学校の1〜3年生の学力状況をしっかり把握して、指導状況を確認するという事が必要です。
本当は行政サイドで動いて欲しいのですが、それまで待ってはいられません。最低限、家で練習するための漢字練習プリントや計算練習プリントくらいは生徒に配るのは当たり前ですから、それすらきちんとやらないような先生は、懇談会などの機会に父母の方でつるし上げて下さい。もしくは校長先生に直訴して下さい。子供さんの将来がかかっているのですから、そのくらいは親の方でやっても構いません。
2点目は「学力防衛策」を取るということです。この際、目安として一番いいのは「漢字検定」でしょう。
偏差値30台の子供達の学力は、先に述べたように小学校1〜3年生レベルです。であれば、漢字検定で8級に合格すれば、少なくても小学校3年生レベルの漢字はクリアということになります。そして、こうした勉強を進めていくと「何かを身につけるためには、それ相応の努力が必要」という感覚も身につける事ができます。 また、もう少し高い級まで目指すことが出来ると就職の際に有利ですし、高校進学後の「簿記」などの資格試験の勉強にも、漢字検定などで勉強に対する免疫が出来ていれば、資格試験勉強に対する抵抗感が無くなります。 もちろん、漢字検定だけではなく、あまり認知度は高くありませんが、数学検定などの他の検定もありますし、塾などが高額で通わせられないという場合は通信教育もあります。それも難しいという人でも、書店で国語や算数のドリルくらいは購入できるでしょう。こういった検定や通信教育を利用して学力アップを図ってみましょう。
漢字検定などの場合、小学校高学年以上の生徒の中には「8級以下の級で、小学校の低学年の子と混じって受験するのは恥ずかしい」と思う人もいるかも知れませんが、実は、自分も子供達に混じって8級から順に受験しましたし、一般の成人の方でも子供達に混じって8級以下を受験しているのを見たことがありますから、恥ずかしがる必要はありません。 「テストは受けたくない」、「家では勉強しない」、それでいて「小学校の低学年の漢字すら書けない」では、それこそ「就職出来ない」となってしまいます。現状を打破するためには「最低限身につけなければならないものは身につける」という感覚が必要です。偏差値30台になってしまっている子供さんに対しては、無理矢理でもやらせて下さい。そして、それすらやらせられない場合、お父さん・お母さんは「うちの子、就職出来ないかも知れない」という事を、今のうちから心づもりしておいて下さい。
3点目は、ちょっと話が大げさになりますが、行政サイドからのアプローチです。
ここで考えられるのは、まず、今まで身障者向けに設置されていた特別支援学級の枠を健常者まで広げるということです。
特別支援学級というのは、身障者が社会に適応出来るように、小学校の勉強の復習や社会に出て働くための技術訓練などを行うクラスですが、学力が低く過ぎる子供達も、身障者と同様社会に出ていくことが出来ない状態になっている訳ですから、どの子も社会に出ていけるようにするためには、やはり健常者用の支援も必要と考えます。 釧路の場合、ちょうどいい具合に教育大という研究機関があるわけですから、附属小・中の1クラスを特別支援クラスにし、そこで、研究を行えば、「生徒が助かる」・「先生不足で悩んでいる特別支援学級を受け持てる先生の育成が出来る」という一石二鳥の政策になります。そして、そこで培ったノウハウを市内全域に広めて行くといいでしょう。
もう一点は、高校数の是正です。他の項目でも書きましたが、釧路市内は高校数が多く、偏差値が低くても合格してしまう状況になっています。また、親の意識は、まず「目先の高校受験」という場合が多く、その後の就職に関しては、高校3年になって直面するまで、なかなか実感出来ていません。 地方の高校は、通学の便を考えた場合削減する事は出来ませんが、せめて市内は「高校に行けば、就職がきちんと出来る」というレベルの高校までで押さえておいて、そこを目安に勉強を頑張ってもらうといいでしょう。そして、現状では、学力の低い高校でも「高校卒業資格を取らせるために無理矢理高校内容の勉強をやらせている」というシステムで進めていますが、これではこのレベルの子供達にとって、将来、何のメリットもありません。ですから、そういう子には「特別支援学校」のシステムを作り、小学校の学習内容をもう一度復習させた方が、就職の際有利になるでしょうし、その後、高校に進学したい場合は、そこから3年間通って高校の資格まで取れるようにしてあげるといいでしょう。
現状では、釧路では約40%の高卒者が、正規社員にもなれずアルバイトすら出来ないという状況で過ごしています。そうやって1年・2年と過ごしてしまうくらいなら、多少遠回りに見えても、将来、確実に就職出来るようなシステムを作って上げた方が、子供達のためになるでしょう。
さて、今まで、長々と偏差値30台の子について書いてきましたが、この偏差値30台のレベルというものは、北海道学力コンクールなどを受験していないと実感できません。そこで、そういったテストを受験していない人のために、偏差値30台の目安をここで書いておきます。
今までの北海道学力コンクール受験者の通知表結果を参考にしてみると、学校によって多少の差はありますが、釧路ではだいたい「オール3」で、偏差値38〜42に集中してきます。お父さん・お母さんの頃だと「オール3は真ん中」という認識できていたと思いますが、絶対評価が導入されてから通知表結果が異常に良くなってしまったため、今ではかなり下層に位置します。 ですから、子供さんの通知表がオール3だと「偏差値30台の悲劇」のボーダーにいると考えていていいと思います。
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