これが根拠で果たしていいのかな?
- markun5
- 2021年5月18日
- 読了時間: 4分
今回も20年近く前に書いた話です。
最近では「エビデンス・ベースト」という、日本語にすると「根拠のある」という意味ですが、これが重視されているようです。
教育では「エビデンス・ベースト・エデュケーション」と言われ、大抵は、統計や脳科学などが根拠として充てられているようですが、その「根拠」自体が果たして正しいのか? という話です。
実は、今回紹介する話でもそうなのですが、アンケートの項目や集計が都合のいいように区分され、要するに「恣意的」な結果になっているケースが、特に「教育」の世界で横行しているように思います。
ですから、今回は、その実例として、読んでください。
<キレる子の原因、文部科学省が調査>
・家庭教育の影響が大?
文部科学省は他の省庁などと協力して、突然暴力を振るうなどのいわゆる「キレる子」の調査を行い、平成14年6月20日付けで、その結果を発表した。 調査は、保護者への電話調査や少年鑑別所・臨床心理士の協力によるもので、事例は654件。その調査の中で「キレる」要因と思われるものを%で示すと以下の通り(重複回答あり)。
1 家庭での不適切な養育態度 75.8% 2 家庭内での緊張状態 63.8% 3 問題行動(非行など) 27.4% 4 家庭内での暴力・体罰 24.0% 5 友人関係の問題 23.9% 6 問題行動への家庭での適切な対処の欠如 20.0% 7 学業面の問題 17.9% 8 友人からのいじめ 16.5% 9 家庭内の暴力的雰囲気 15.4% 10 教師からの不適切な対応 5.2%
この調査で、一位になっている「家庭での不適切な養育態度」を細かく分類すると、「過度の統制」が18.8%、「養育不全(親として未熟な態度)」が17.9%、「放任」14.8%、「過保護(甘やかし)」13.6%。さらに、二位の「家庭内での緊張状態」では、「離婚」24.5%、「本人と親兄弟の不仲」が15.6%、「父不在」14.5%となっている。 また、事例のうち、87.8%が男子で、キレた子供の70%以上には、喫煙・飲酒・深夜徘徊・暴走などの問題行動はないとしている。 そして、タイトルにもあるように、この結果から、家庭内での要因が大きく影響し、学校での影響は少ないと分析しているんだよね。
ところが、よくよく見てみると、この項目、ちょっとおかしい感じがする。例えば、4位の「家庭での適切な態度の欠如=悪いことをしても注意しない」だけは、具体的な項目として独立しているにも関わらず、1位と2位は、その項目のタイトルを「不適切な養育態度」とか「緊張状態」などという抽象的な表現にして、複数の項目をひとまとめにしてしまっている。これじゃあ、数値が高くなるのは当たり前じゃん。 それで、ここでは、1位と2位の具体的な項目をバラバラにして、もう一度順位をつけ直してみようと思う。
1 問題行動(非行など) 27.4% 2 離婚 24.5% 3 家庭内での暴力・体罰 24.0% 4 友人関係の問題 23.9% 5 問題行動への家庭での適切な対処の欠如 20.0% 6 過度の統制 18.8% 7 学業面の問題 17.9% 7 養育不全(親として未熟な態度) 17.9% 9 友人からのいじめ 16.5% 10 本人と親兄弟の不仲 15.6% 11 家庭内の暴力的雰囲気 15.4% 12 放任 14.8% 13 父不在 14.5% 14 甘やかし 13.6% 15 教師からの不適切な対応 5.2%
さて、これでみてみると、もっと原因がハッキリするような感じだよね。やっぱり、一番まずいのは「非行」ですよ。1位と5位で関係してるでしょ。そして、これについては、家庭と学校と両方で取り組まなければならない問題。家庭ばかりに問題を押しつける訳にはいかないよね。それに「家庭での対処の欠如」というのは項目になっているけど、学校の先生でも「煙草を吸っている生徒に注意もしない」なんて話を聞いたことがあるよ。そういうのはどうなの?
そして、もう一つ、キレた子供の70%以上に非行的行動がなかったというように述べているけど、これ、裏を返せば30%近くの子が、非行的行動をしていたという事でしょ。30%近い数字なら、この順位で行けば、どうどう1位になるよね。
それに加えて、もう一つの大きな原因が監督不行き届きではないだろうか? 「離婚」・そして「父不在」と、片親だけしか子供の様子を見ることが出来ない状況になっているのが、もう一つの大きな原因のように感じるよ。数字でも、「離婚」だけで2位、「離婚」と「父不在」を合わせた数字にすると、39%にもなるよ。
と言うことで、原因は「家庭のみにあらず」。適切な対応は家庭・学校双方にまだまだ必要なようですよ。
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