思考力が「知識を使う力」であり、知識がなければ思考力が育たないということであれば、授業の進め方も「まず知識を与え、それから考えさせる」という手順を取るのが当たり前ですよね。
ところが、学校の先生にはありがちなのですが、問題演習を行う際に、まず生徒にやらせてから「ほら、ここはこうすればいいでしょ」とか「ここはこうしなきゃダメだよね」と得意になって後から知識を教える先生がいます。塾ではこれを「知識の後付」と言い「禁止事項」なんですね。
そして、この「知識の後付」を行っている場合の見分け方は「生徒が何をしていいのか、分からない」という状態になっているか、いないか、で判断するといいでしょう。塾では生徒が「何をしていいのか分からない、という状態を作らない」ということを前提として授業を構築しますから、基本的に「知識の後付」はなくなっていきます。だから、プリントなどを用意して「始め!」と言うと、生徒はまっしぐらに問題に向かって集中していく姿勢に自然になって行くわけです。
お父さん、お母さんのイメージで、塾はみんなが必死になって勉強している、というものがあると思いますが、何の事はない、授業の構築の仕方が違うだけなんです。
生徒の集中力が無くなったり、授業が面白くないというのは、実は、この点にあります。後ろや横を向いてちょろちょろする生徒が出てきたら、これは「知識をしっかり与えていない」と判断していくと、授業力があがります。中には「どこまでが知識で、どこからが思考力なのか、分からずに授業をしている」先生もいると思いますが、その区別は「生徒の姿勢」を見ると分かります。基本的に授業の善し悪しは「生徒の姿勢」で判断すると、いいんですよ。
実際に学校の先生が書いた本を読んでみると「問題解決学習」や「アクティブ・ラーニング」と称しているものの中に、この「知識の後付け」を行っているものが非常に多いんです。極端な話をすると、この「知識の後付けがダメ」ということが分かっている先生の立場で見ると「先生がきちんと教えられないから生徒に丸投げしている」ようにしか見えないんですよね。
自分が「問題解決学習」や「アクティブ・ラーニング」について懐疑的に捉えているのは、実はこの「生徒に丸投げ」状態の授業を行っている部分が平然と本の中に書かれていて、それを「いい授業」だと思っている部分があるからなんです。
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